イザナギが身を清め、神々を生んだとれるみそぎ池。雨が上がった夜、土の香りが漂い、湖畔の御幣が心地よい風に揺れる

イザナギが黄泉の国の汚れ清めた、みそぎ池

 松林にぽっかりと開いた空間に、イザナギが黄泉(よみ)の国の汚れを落としたとされる御池はある。宮崎市の一ツ葉海岸沿い、阿波岐原森林公園市民の森の一角。神話にちなみ「みそぎ池」の名で親しまれ、初夏、一面に広がるスイレンの花が訪れる人を和ませる。

 妻イザナミを追って黄泉の国に渡ったイザナギ。そこで恐ろしい目に遭い、帰ってきて体を清めたという。そのとき生まれたのが太陽神アマテラス、夜の神ツクヨミ、八岐大蛇(やまたのおろち)を退治したスサノオノの三貴子。ほかにも多くの神が誕生している。

 イザナギはなぜこの場所をみそぎの地に選んだのか。近くにある江田神社の金丸忠孝宮司(64)は「真東から上がる太陽や海岸の松林、海などが美しく、身を清めるのに最適だったからではないか」と言い伝えを紹介する。

 池の周囲は約400メートル。水辺に3本の御幣が立てられており、昼でも厳かなたたずまい。同神社によると、御幣に向かって二礼二拍手一礼し、願い事を一つするとかなえられるという。

 スイレンの開花期を過ぎると余り目立たないみそぎ池だが、古事記編さん1300年を迎え注目を浴びている。宮崎市神話・観光ガイドボランティア協議会の岡田勝運会長(73)は「以前は市民の森の花を見たついでに来る人が多かったが、地元の人が県外の人を連れて来るようになった。古事記の舞台をこの目で見たいという声をよく聞く」と神話ブームを歓迎する。

 湖面を埋め尽くすスイレンの葉や水辺の御幣。それが時とともに表情を変え「みそぎ発祥の地」の神秘さを漂わす。

 【メモ】江田神社は市民の森南側にある。6月30日、汚れを落とす「茅(ち)の輪くぐり」の神事を開き、使った綱を海に流す。同神社TEL0985(39)3743