ひんやりとした空気が洞窟内を漂う天安河原。大小の石積みがひしめき、八百万の神々が膝を交え話し合う光景が重なり合う
耳澄ませば、神々の話し声聞こえてくる
耳を澄ますと、神々の話し声がそこかしこから聞こえてくる。高千穂町岩戸の岩戸川渓谷にある「天安河原」は、そんな神々しく凛(りん)とした空気が漂う。静寂の中に身を置き、目を閉じると、神話の世界がそこに広がる。天の岩屋戸神話の地。アマテラスオオミカミが隠れた天の岩屋戸から約500メートル離れた場所にある。闇に閉ざされ困り果てた八百万の(やおよろず)神々が、どうやってアマテラスオオミカミを外に出そうかと話し合ったと伝わる。天岩戸神社西本宮から岩戸川沿いに歩いて約10分。断崖に間口約30メートル、奥行き25メートルの洞窟が現れる。無数の石積みが一帯を埋め尽くし、それが一層神々の存在を身近にさせる。
願いを込めて積み上げると思いがかなうといわれている。地元の人によると、昭和30年代から見られるようになったという。年間推計約30万人(町調べ)が訪れるだけあって、大水で流されても自然と元の光景を取り戻すそうだ。
高千穂町中央公民館社会教育指導員の田尻隆介さん(63)は「地元では仰慕ケ窟(ぎょうぼがいわや)と呼ばれ、昔は子どもたちが水遊びをしたり大人たちも涼を取ったりと癒やしの場所だった。里の人々は神話史跡として親しみ、神々をしのんでいた」と話す。
新緑の隙間から洞窟に差し込む一筋の光。それはあたかも天地をつなぐ神々の通り道のように見えた。
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高千穂町と高原町を結ぶ広域観光ルート「ひむか神話街道」。総延長約300キロ。沿線に残る記紀伝説の地を訪ね、毎月1回、古代ロマンの世界を写真で表現する。
【メモ】天岩戸神社は5月2、3日、春の例大祭を開催。岩戸神楽が奉納されるほか、ご神幸行列が岩戸地区中心部を練り歩く。渓谷の新緑も見ごろを迎える。天岩戸神社TEL0982(74)8239。