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3本足の看板猫 優しさのリレー命救う

2016年11月12日掲載

理容店の看板猫「虎」と飼い主の杉田さん

 高鍋町蚊口浦のJR高鍋駅前にある理容店「杉田理容」に3本足の看板猫がいる。名前は「虎」。住民に海で拾われ、店主の杉田憲行さん(65)と暮らす。一時行方不明になり、その間、足をけがしながらも見知らぬ人に保護され、杉田さんの元に戻ってきた。周囲の人たちに見守られ、優しさのリレーで育まれてきた命。杉田さんは「虎が今ここにいるのは奇跡」と共に過ごせる喜びをかみしめている。

 6年ほど前、同町の蚊口浜に捨てられていた猫を近所の人が拾ってきた。片手に乗るくらいの大きさで、杉田さんの祖父・虎太郎さんの名前から「虎」と名付けた。

 飼い始めて1、2カ月たったころのこと。昼間にふっと家を出た虎が、いつまでたっても帰ってこない。周辺を捜しても見つからず、杉田さんは「事故に遭って、どこかで死んでしまっているのかもしれない」と諦めていた。

 それから1、2カ月ほどしたある日、友人から杉田さんに連絡があった。「カラオケ店に『猫を預かっています』と張り紙があった。杉田君ちの猫に似ている」。飲食店やスーパーなどあちこちに虎の写真が貼られていた。

 チラシの主は川南町の女性だった。蚊口浦から5キロ以上離れた山手の牧場付近で虎を見かけ、「1本の足がぶらぶらした状態だった」ため保護したという。「なぜそんなに遠くにいたのか。見つかって良かった」。女性から虎を引き取った杉田さん。獣医師に相談し、けがした右前足は切断することにした。

 「人間と違って文句も言わないし、痛いとも言わない。見つかったときは『これはダメじゃわー』と思ったけど、生命力がある」と杉田さん。夜遅く帰ってきても、必ず玄関に駆け寄ってきて出迎えてくれる虎。地元のビックバンドに所属する杉田さんが仕事を終え、サクソフォンを吹き始めると、のんびりと横になり練習が終わるのを待っている。

 今や近所の人から「虎が道を通ればバスも止まる」と言われるほど堂々とした風貌の虎は、通学途中の子どもたちからも人気だという。「飼い主よりも肝が座っていると言われる。虎のようにたくましく生きんといかんと思うがね」。杉田さんは虎に多くを学びながら人生を見つめている。