自宅で妹に改良した財布を手渡す未悠さん(左)。財布の外側には電卓が装着されている=高鍋町上江
高鍋高2年の荻原未悠(みゆ)さん(16)=高鍋町上江=は、知的障害がある妹梨世(りせ)さん(15)が1人でも買い物ができるように改良した財布を作った。小銭入れの深さを浅くして取り出しやすくしたほか、支払う金額を計算できるように電卓を装着するなど知恵と工夫が詰まっている。「妹が自立した生活をできるようにしたい」という一心で、改良を重ねて完成させた。
未悠さんは同校の普通科内に、興味や関心に応じた課題を見つけて研究する「探究科学コース」があることを知り入学。課題研究の授業などで、梨世さんの病気や症状について調べてきた。梨世さんが通う中学校で、特別支援学級の担任に学校生活について取材。「買い物学習で財布からお金を支払うことが困難だった」と聞き、「知的障がい者の自立に向けた買い物学習と財布の開発」を研究テーマに決めた。
課題を探るため、梨世さんの買い物に3日間同行して観察した。小銭入れの底が深い財布は硬貨をつまんで取り出すときに時間がかかることや、お金の計算が苦手でレジでの支払いが困難なことが分かった。
財布は梨世さんが使っている長財布と同じ大きさのものを購入し、改良を加えることにした。小銭入れは6種類の硬貨別に収納できるように工夫。レジで支払うお金をあらかじめ収納する小銭入れも別に設け、硬貨をつまみやすいように底を浅くした。財布の外側には電卓を取り付け、消費税などの計算ができるようにした。
さらに、買い物の行動手順を示した12項目のチェックリストを作成。開発した財布を使った買い物に3日間付き添った。その結果、12項目のうち「電卓を使って計算する」「財布からお金を出す」など6項目を援助がなくてもできるようになった。
梨世さんは「以前の財布より使いやすくなった」と喜び、買い物に自信を持てるようになったという。今後は、目的の商品棚に行くことなど援助が必要な行動についても練習し、品数や金額を増やした買い物にも挑戦する。
未悠さんは昨年12月に同校であった課題研究発表会で、成果について発表。医療系の職種を志望している未悠さんは「他の障害者にも財布を活用してもらえるか、検証してみたい」と話していた。