
30年にわたり管理してきた自宅庭に咲くシバザクラを楽しむ黒木さん夫婦
目が不自由になった妻を元気づけようと自宅で庭造りを始め、シバザクラを植え続けてきた新富町新田の黒木敏幸さん(87)が、高齢になったことから今季を最後に庭園の管理を終えることにした。庭園は美しい眺めが評判となり、毎年県内外から多くの見物客が来訪。今年は庭造りを始めて30年目という節目の年で、妻の靖子さん(80)は「夫の健康が一番大切。感謝の気持ちでいっぱい」と敏幸さんを気遣っている。
靖子さんが多くの人と交流できる庭にしようと、敏幸さんが庭造りを始めた当初、広さは2畳ほどだったという。その後、年々拡大させ、現在はシバザクラが咲く約5千平方メートルを一般開放している。
夫婦愛であふれる庭園は、これまでたくさんの人に感動と元気を与えてきた。敏幸さんが心に残っているのは、大阪府から訪れた若い夫婦。妻が結婚後に目が不自由になったという。夫が敏幸さんに抱き付き「じいちゃんとばあちゃんのようになります」と涙を流したことが忘れられない。
多くの人に愛されてきた庭園だが、広大な敷地の管理は作業量が膨大。草むしりや雨で流れた土の補充、苗作りなど年中休む暇もなく、年齢を重ねた敏幸さんにとって楽な作業ではなかったという。
敏幸さんは「ずっと続けたい気持ちはあるが、笑顔でお客さんを迎えられるうちに管理を終えようと思った」と胸の内を明かす。靖子さんは「毎年春に、たくさんの人が遊びに来てくれることがうれしかった」と振り返る。
今後はシバザクラの代わりに果樹を植え、一部のシバザクラは残す予定で、黒木さん夫婦は「シバザクラがなくなっても、またたくさんの人に来てほしい」と話している。
シバザクラは現在二分咲きほどで、今季は雨や気温の影響で開花が遅れており、5月初旬まで楽しめるという。問い合わせは、こゆ地域づくり推進機構(電話)0983(32)1080。