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失語症乗り越え「話し方教室」再開 元アナ樫元さん

2016年5月18日掲載

失語症を乗り越え7年ぶりの「話し方教室」に立った樫元洋さん

 MRT宮崎放送の元アナウンサー樫元洋さん(73)=宮崎市桜ケ丘町=は、脳出血による失語症を乗り越え、約7年間休止していた「話し方教室」の再開にこぎつけた。宮崎市内であった教室では17日、復活を待ちわびた受講生15人が笑顔で出迎え。樫元さんは「やっと日常が戻ってきた」と喜びをかみしめた。

 樫元さんは愛媛県出身。「電波が届いて、偶然見ていた番組でアナウンサー募集していた」MRTに入った。ニュースや音楽番組を主に担当し、10年以上続く人気番組の司会にも抜てきされるなど、約32年間、最前線で活躍。「経験を生かし、多くの人に話す楽しさを伝えたい」と、2003年の退職から約3年後、近くの公民館で話し方教室を始めた。

 そんな樫元さんを09年6月、脳出血が襲う。一命は取り留めたが、右半身がまひ。物の名前が出てこなかったり、相手の言葉が理解できない失語症を患った。医師から「完治は難しい」と告げられた。

 手術後、言語聴覚士の逆瀬川倫明さん(57)によるリハビリが始まったが、写真を見せられても言葉が出てこない状態に「自分はもう終わった」と絶望した。妻・万喜子さん(70)も献身的にリハビリに付き添ってくれたが、気力を取り戻せず、5年以上の年月が流れた。

 劇的な回復につながったのは、逆瀬川さんの「助手の高校生のスピーチを指導してほしい」という一言。少しでも自主的に取り組んでもらおうという思いからだった。

 アドバイスをするうちに、教室を開いていたころの情熱が戻ったという樫元さん。苦しみながらも、懸命にリハビリに取り組むように。単語しか話せなかった状態から、わずか1年で、60秒スピーチも可能になり、逆瀬川さんも「ここまで話せるようになった人は見たことない」と驚く回復ぶりだった。

 約7年ぶりの教室は終始、和やか。「この日を待ちわびていた」「分かりやすい授業だった」。終了後、樫元さんを囲んだ受講者は、口々に再開を祝った。

 「話すことの楽しさを伝えていきたい」と樫元さん。困難を乗り越え「生きがい」を取り戻した姿からは「話す楽しさ」が存分に伝わってきた。