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県域JA誕生

2024年4月2日
◆「発展的進化」遂げる改革に◆

 県内の13JAを合併した県域JA「宮崎県農業協同組合」(JAみやざき)が1日誕生した=写真。1948(昭和23)年、県内に農業協同組合が発足した当初、114あった数が76年を経て一つとなる大改革で、本県農業と地域社会に今後、大きな影響を与えることは間違いない。

 JA宮崎中央を「存続JA」として、他のJAが解散する「存続合併方式」が採られ、2025年3月にはJA宮崎信連、JA宮崎経済連、3畜連も統合する。中央会、信連、経済連の三連合会を統合する県域JAは初で、全国の関係者も注目している。

 誕生したJAみやざきは、組合員約15万人、正職員約3100人。22年度ベースで農畜産物販売取扱高は計1369億円と、同年度に全国最多だったJAさが(佐賀県)の1095億円を超え、単独JAとして全国最大規模となる見通しだ。

 17年から県域JAの検討を進め、23年10月に13JAの全正組合員の9割超の賛成を得て設立された。全国的にも1県1JA化が進み、これまで奈良、沖縄、香川、島根、山口の5県で行われている。

 就農人口の減少、農畜産物の輸送コスト増加、肥料、飼料、燃料の高騰など農業を取り巻く環境は厳しい。JA経営も正組合員の減少や高齢化、取扱高・事業総利益の減少、施設の老朽化など課題が山積している。旧体制での対応に限界も見える中で、対応力強化を目指したことが県域化の背景にある。

 県域JAとなることで販売や仕入れの強化、重複業務の集約による合理化、財務基盤が強化されることで組合員への支援や投資が充実できる。肥料や飼料など仕入れ一元化体制を構築しコストを下げることができるという。

 半面、地域特性の喪失や利便性の低下など組合員には懸念も残る。市町村合併と構図は似ており、過疎地などの心配ももっともだ。県域JAでは合併当初の段階では、旧JAを地区本部として地区の特色や独自性を重視するとしている。

 地域特性の一例で言えば、地域ごとに歴史と工夫を重ね、ブランド化などを進めてきた品目もある。県域単位での物量増大などは販売強化につながるものの、知恵を出し合う丁寧な合意形成が欠かせない。

 JAみやざきは「中期3カ年計画」(25~27年度)を策定する方針だ。就任した栗原俊朗組合長は「合併が終わりではなくこれからが本番。期待を裏切らないよう発展的進化を目指す」と述べた。持続可能な農業と地域発展へ手腕が問われる。

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