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宮日農業技術賞

2024年1月19日
◆惜しみなく技術を広め貢献◆

 第66回宮崎日日新聞農業技術賞の受賞者に1個人5団体2法人が決まり、きょう宮崎市・宮日会館で贈呈式が行われる。

 世界的な気候変動や人口爆発によって水不足、食糧危機が叫ばれている。国際情勢も激変し、物価高が経営を苦しめている。受賞者に共通するのは、課題解消に向けて創意工夫を重ねてきた各個人・団体の努力もさることながら、極めた技術を惜しみなく産地全体に普遍化し仕組みを確立している点だろう。

 スイートピー栽培に取り組み、個人・花き部門で受賞した美郷町の栁田三男さん(76)は収益性の高い品種選定や管理方法を追究。積極的に伝承し、産地の品質向上に貢献した。

 各団体の結束力にも目を見張る。JA串間市大束かんしょ部会(川崎皇裕(たかひろ)部会長、91人)はサツマイモ基腐(もとぐされ)病発生を受けて対策を強化。産地復興へ踏ん張りを見せる。

 JA宮崎中央国富支店胡瓜(きゅうり)部会(今村泰治部会長、72人)は定期的な勉強会や情報共有を通じて「つる下げ栽培」普及に努めた。栽培期間の長期化に成功し、単価の高い冬にも連続した収穫が可能になったと喜ぶ。

 減農薬への関心の高まりから結成されたJA西都ピーマン部会減農薬ピーマングループ(澤田真史(まさちか)部会長、16人)は化学農薬に頼らない「天敵農薬」を導入。生産過程の安全性や環境保全などで県の基準を満たしていることを示す「ひなたGAP」をグループで取得したことは、20年余りの成果と言える。

 茶業分野では延岡茶生産組合(亀長浩蔵組合長、18人)と西臼杵地区烏龍茶研究会(甲斐雅也会長、12人)の2団体が選ばれた。茶価低迷という苦境にあるものの、県内では独自製法でユニークな茶生産が進められている。多くの県民にぜひ一服してもらい、県産茶の魅力を味わってもらいたい。

 法人2団体は若者の奮闘ぶりが印象的だ。宮崎牛生産に注力する都城市山田町の内田畜産グループ(内田大樹代表取締役社長)は社員の平均年齢が37歳。担い手の人材育成、子育て世代が働きやすい環境整備にも力を入れてきた。自家製堆肥を利用したキク栽培に取り組む小林市のはなごころ(高津佐(こうつさ)雄三代表取締役)は17年設立。省力化や従業員教育を両立させ、計画的な規模拡大に手応えを得た。

 食は健康な生活を支える基盤であり、農業は消費者の健康や暮らしに直結する。生物の多様性、国土保全、農山漁村の生活文化とも切り離せない重要な産業だ。受賞者の多彩な活動は、農業が維持されている地域の豊かさを教えてくれる。農業の持続性を高めるリーダーとしてさらなる活躍を期待したい。

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