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損保カルテル

2023年12月30日
◆業界体質 根本から変革せよ◆

 金融庁は、企業や官公庁向けの保険契約で損害保険大手4社にカルテルの疑われる不適切な行為があったとして、保険業法に基づく業務改善命令を出した。損保大手は過去にも保険金不払いなどの問題を起こしている。大手の高いシェアなどを背景に問題行為を繰り返していたとみられ、信頼回復には業界体質の抜本的な改革が急務だ。

 大手は東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の4社。

 不適切契約が繰り返されていたのは、リスク分散を目的に複数の損保会社が一つの契約を分担して引き受ける「共同保険」と呼ばれる仕組みだ。

 金融庁によると営業担当者が互いに連絡を取り合い、保険料の各社シェアを維持できるよう、企業や自治体との交渉窓口になる幹事社が事前調整を持ちかける不適切行為が広く認められたという。提示額をそろえるなど入札を形骸化させるカルテルの疑われる契約は、企業など576の取引先に上った。

 保険契約に際して公正な競争が働かないことで、不当に高い保険料を払わされた恐れがある。金融庁が厳しい行政処分に踏み切ったのは当然である。鈴木俊一金融担当相は記者会見で、4社における法令順守の意識を問題視し「悪質性は高い」と指弾した。

 損保大手は、医療保険などで大量の保険金不払いが問題となった2007年にも一斉処分を受けるなど、再発防止を誓ってきたはずだ。経営陣の刷新などにとどまらない、解体的な体質改革が必要と各社は覚悟すべきだ。今回の問題を、背景にある課題に目を向ける機会としたい。一つは寡占構造である。

 損保業界は00年代以降、合併・再編が進み大手4社のシェアが8割を超えるまでになった。占有率の高さが競争を鈍らせ、不適切な契約行為の下地になった点は想像に難くなかろう。

 次に、中核事業である火災保険での赤字続きがある。地球温暖化が背景にあるとみられる自然災害が多発。4社の火災保険で収支が悪化した後の17~20年に問題契約は急増していた。調整により保険料を一定水準に維持することで、各社の利益を図った構図を金融庁は挙げる。

 さらに、株式保有を通じた企業との「もたれ合い関係」である。損保各社は関係維持を目的に多くの企業の株式を保有しており、それが取引をゆがめていた面が指摘された。損保業界が体質改革へ克服しなければならない課題は多く、道は険しい。

 4社を巡っては公正取引委員会も独禁法違反の疑いで調査を進めている。実態の徹底解明が待たれる。

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