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OECD学習到達度調査

2023年12月8日
◆順位に一喜一憂はやめよう◆

 2022年に実施された経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)で、日本の15歳は81カ国・地域中、数学的応用力が5位、読解力3位、科学的応用力2位との結果が公表された。18年実施の前回調査と比べ、平均得点にも有意な上昇が見られた。

 文部科学省は「3分野全てにおいて世界トップレベルで、わが国の生徒の学習状況はおおむね良好」と分析している。今回の調査時期は新型コロナウイルス禍と重なり、OECD全体の平均点は前回より低下した。その中で、全ての分野で平均点を伸ばした日本の高1生の結果は率直に評価してよいだろう。

 また、保護者の学歴や家庭の所有物など「社会経済文化的背景」と数学的応用力の相関では、日本は他国より家庭環境などの影響を受けにくいとの傾向も明らかになった。

 ただ、今回の好結果はコロナによる休校期間が他国に比べて短く、コロナ流行下でも対面の学習機会を確保しやすかった環境に負う部分が大きい。

 PISAを巡っては、順位が下がるたびに国内で物議を醸してきた。読解力が8位から14位へと低下した03年調査は「PISAショック」と呼ばれ、ゆとり教育批判のきっかけになった。その後の20年間も順位は変動したが、日本の子どもたちの学力は世界的に見ればおおむね高水準にある。それに比べて、自己肯定感や幸福感が低いことが大きな課題となってきた。

 PISAでは、心身の健康や幸福感を表す「ウェルビーイング」も調査している。「学校への所属感」を指標にすると、日本の15歳は学校の一員であると感じる割合が増え、学校での疎外感や居心地の悪さを感じる割合が低下した。世界の中で所属感が最も向上し、コロナ禍からのレジリエンス(回復力)が高い国だと評価されている。

 だが、そうした見方は学校現場の教員の実感に合致しているだろうか。小中の不登校の児童生徒は10年連続で増加し、22年度は約30万人と過去最多を更新した。中学生では16人に1人に上る。OECD調査は学校に通っている生徒が対象。今回の結果だけで幸福感が高まったと考えるのは早計だ。

 PISAは「知識や技能を実生活の課題で活用できるかを測る」ことを目的としている。国際的な学力視標として重視する傾向は、東アジアの国々に顕著だ。しかし、学校の経済的役割を重視するPISAの在り方には批判的な見方もある。

 世界にはPISAを重視していない国もある。良い結果にも、悪い結果にも過度に反応する必要はない。冷静に受け止める時期が来ている。

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