教団財産の流出防止策
2023年12月5日

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の財産流出を防ぐ議員立法の国会審議が本格化している。政府が申し立てた解散命令請求を認める司法判断が確定した場合に備え、その後の被害者救済の資金を確保する狙いだ。
法案は二つある。財産処分の監視を柱とする自民・公明・国民民主3党の特例法案と、財産を包括的に保全する立憲民主党・日本維新の会の特別措置法案である。
自公国案には、被害者や支援の弁護士らから実効性を疑問視する指摘がある。立維案には憲法が保障する「信教の自由」や「財産権」に抵触する懸念が宗教界などから出ており、内閣法制局も慎重姿勢だ。
約40年前から続くとされる高額献金や霊感商法などの被害救済の重要性に誰も異論はない。2案とも目的は同じだ。違いは手法であり、何をより重視するかによって異なると言える。
「信教の自由」と「被害者救済」。その両立を図らねばならない。自民、立民は衆院法務委員会での5日の採決で合意した。5党の修正協議を続け、バランスの取れた着地点を見いだしてもらいたい。
自公国案では、解散命令請求を受けた宗教法人に対し、不動産処分などは1カ月以上前に国などに通知するよう義務付け、その内容は公告する。通知がない処分は無効とする。
また通常は年1回の国などへの財産目録、貸借対照表などの提出を3カ月ごととし、被害者の閲覧を可能にする。個別の被害者による財産保全手続きを後押しするため、経済力を問わず費用を支援する。
財産状況の透明性を高めることによって、間接的に不当な処分、移動を抑止する手法と言える。請求段階での包括的な財産保全は「信教の自由」「財産権」を侵害する恐れがあるとして見送った結果であり、一定の理解はできる。
立維案では、裁判所が管理人を置くなどの財産保全命令を出せることとし、包括的な保全を可能にしている。企業の解散命令請求が出た段階で財産保全を認める会社法の規定を準用した。
しかし、企業の解散命令の要件は役員らが刑法などに違反し法相から警告を受けたのに違反を反復、継続した場合であり、宗教法人とは前提が大きく異なっている。
違憲性が激しく争われることによって、保全命令の確定までが長期化し、逆に実効性が低くなるとの指摘も出ている。
二つの法案には一長一短がある。立民の泉健太代表は自公国案を一定評価している。双方歩み寄れるはずだ。ぎりぎりまで協議を継続すべきだ。