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技能実習見直し

2023年11月25日
◆これ以上の理不尽を許すな◆

 外国人技能実習制度に代わる新たな制度の創設に向け、昨年12月から議論を重ねてきた政府の有識者会議が最終報告をまとめた。技能実習で認められていない職場の「転籍」を可能にしたり、受け入れ先の企業に対する監督・指導を徹底したりすることなどを提言している。これを基に、政府は来年の通常国会で関連法案の提出を目指す。

 1993年に始まった技能実習では長年にわたり長時間労働や賃金不払いなどの問題が指摘されている。職場を変えられないため耐えきれなくなった実習生の失踪が相次ぎ、内外で「人権侵害」の批判が絶えない。

 会議ではまず、一つの職場で1年以上働いたら一定の技能や日本語能力を条件に同じ産業分野で転籍できるようにすることが決まった。だが地方から賃金の高い都市部に人材が流出しかねないと中小企業や自民党が反発。業界側の要望があれば最長2年まで認めないことも可能にする修正案も検討した上、報告書には「必要な経過措置を検討する」と記述した。

 見直しは多岐にわたり、技能実習の機能不全があらわになっている。これ以上の理不尽を強いることは許されない。外国人労働者の人権をしっかりと守り、定着と共生につなげられるよう、実効性を重視した法改正と運用が求められている。

 「育成就労」という名称が提案されている新制度の下で、外国人は原則3年、同じ産業分野で働き、即戦力の外国人受け入れのため4年前に創設された特定技能1号の水準に見合う技能を習得する。その後も日本にとどまるなら特定技能1号に進み5年働く。さらに熟練技能を要する2号に進めば在留期間の更新が可能になり、家族を呼び寄せることもできる。

 来日して1年以上の就労で転籍可能となり、以前より中長期的な将来設計をしやすくなろう。ただ企業側の事情で転籍を認めないことになるなら昇給など待遇改善を行うのが筋だろう。また転籍には転籍先の情報提供などが欠かせない。

 有識者会議は当初、役職員兼務を制限する方向を打ち出したが、企業から「兼務できないと団体を運営できない」などと反対意見が相次ぎ、兼務は維持することになった。弁護士による外部監視を強化するなど、対策を講じる必要がある。

 自国の送り出し機関やブローカーに手数料を要求され、多額の借金を抱え来日する実習生も後を絶たない。関係国と協議を重ね、粘り強く排除を進めなければならない。

 日本社会は、もはや外国人の働き手なしに成り立たない。危機感を持って環境改善に取り組まなくてはならない。

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