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日中首脳会談

2023年11月22日
◆課題解決に対話を継続せよ◆

 岸田文雄首相は訪問先の米西部サンフランシスコで、中国の習近平国家主席と会談し、両国が協力を通じて双方の利益を拡大する「戦略的互恵関係」を再確認し、今後、首脳同士を含むあらゆるレベルで緊密な意思疎通を図ることで一致した。

 両氏の会談は昨年11月以来、1年ぶりだ。岸田首相はこの間、中国との関係悪化を踏まえ、2008年の日中共同声明に明記された「戦略的互恵関係」という言葉を使わず、「建設的かつ安定的な関係の構築」という表現にとどめていた。

 今回、戦略的互恵関係を再確認したことは、冷え込んだ両国関係をこれ以上悪化させず、修復を図る動きと言えよう。

 懸案となっている東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を受けた中国側の日本産水産物の輸入規制問題では今後、専門家レベルでの議論も含め、対話を通じて解決方法を見いだしていくことで一致した。ただ、今回の会談で、水産物輸入規制問題を含め、日中間の個別課題で解決に向けた前進があったとは言い難い。

 中国は日本の最大の貿易相手国であり、中国側も経済面で厳しい状況が生じている。共存こそが両国の利益であり、地域の安定にもつながるものだ。今年は日中平和友好条約の発効から45年に当たる。関係改善への動きを進めるために、緊密な対話を継続し、個別課題を処理していく知恵を双方が絞るべきだ。

 しかし個別課題のやりとりでは互いの主張を譲らなかった。処理水の海洋放出に関して、岸田首相は「科学的根拠に基づく冷静な対応を求める」と輸入規制の即時撤廃を要求。これに対して習主席は処理水を「核汚染水」と呼び、「日本は国内外の合理的懸念に真剣に対応し、建設的態度で適切に対処すべきだ」と反論した。

 約1時間の会談で、岸田首相は中国で拘束されている邦人の早期解放を改めて要求。安全保障面では東シナ海の情勢について「深刻な懸念」を表明するとともに、ロシアとの連携を含む中国の軍事活動の活発化にも懸念を伝え「台湾海峡の平和と安定が日本を含む国際社会にとって極めて重要だ」と指摘した。

 これに関しても習主席は、台湾は日中関係の政治的基礎に関わる問題だと述べ、「日本は中日関係の基礎を損なわないようにするべきだ」とけん制した。

 沖縄県・尖閣諸島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)内に中国が設置したブイの撤去問題なども平行線に終わった。

 これらの課題に解決策を見いだす取り組みは北東アジア地域の緊張緩和につながる。米中対立の構図の中で、日本の独自外交のあり方が問われている。

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