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創価学会の名誉会長死去

2023年11月21日
◆平和への思い継承できるか◆

 長年にわたり創価学会を率いてきた池田大作名誉会長が死去した。近年は表舞台から離れていたとはいえ、与党・公明党の創立者で、支持母体のカリスマ的な存在だっただけに、一つの時代の終わりを意味する。同党にとどまらず、政界に少なからぬ影響を与えよう。

 その池田氏が生涯訴え続けたのは、平和や核廃絶に対する強い思いだった。それは長兄を亡くした戦争体験からだ。数々の平和への提言、核軍縮の署名活動などを展開。公明党が「平和の党」を掲げるのも、名誉会長の意をくんでいる。

 国際交流、文化・教育活動にも力を入れ、創価学会インタナショナル(SGI)を設立する。とりわけ日中関係に熱心に取り組み、結党時に党の外交政策の骨格として、中国を正式承認し、国交回復に努めるよう求め、68年には創価学会としても日中国交正常化を提言した。

 これを受け、71、72年に公明党の竹入義勝委員長(当時)が訪中し、周恩来首相(同)らと会談。国交正常化の政府間交渉へレールを敷き、中国側も「井戸を掘った人(恩人)」と高く評価する。

 一方、宗教団体の活動が社会問題化したこともあった。「折伏(しゃくぶく)」と呼ばれる激しい勧誘活動で、世論の激しい反発を浴びる。創価学会に批判的な書籍の出版を差し止めるよう、公明党委員長が自民党幹事長に依頼した「言論出版妨害問題」も表面化。70年に「政教分離」を宣言したが、政教一致批判が付きまとった。日蓮正宗総本山の大石寺から信徒団体の破門を通告され、壮絶な「宗門対立」も繰り広げる。

 公明党が93年の非自民による細川護熙連立政権への参画を経て、一部の参院議員を除き新進党に加わると、自民党の攻撃にさらされ、政教分離問題を巡り、池田氏の証人喚問を突き付けられた。99年に自公連立にかじを切ったのは、この攻防が底流にあった側面は否めない。

 会長就任時に140万世帯だった会員を、日本827万世帯、海外280万人という宗教団体に育て上げた池田氏。かつての集票力は衰えを見せているものの、固い組織票は「選挙マシン」とも評される。その象徴なき創価学会と公明党は喪失感から組織の結束力、求心力の低下は避けられそうにない。

 安倍政権以降、公明党は安全保障政策などで自民党に押されがちな場面が目立ち、支持母体の会員と意識の差も垣間見える。精神的な支柱を失った創価学会はどこに向かうのか。池田氏が抱いた平和や大衆への思いを継承できるのか。政治へのかかわりを含め、今後その存在意義が問われるのは間違いない。

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