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ライドシェア

2023年11月14日
◆将来の公共交通を展望せよ◆

 一般ドライバーが自家用車を使って有償で乗客を運ぶ「ライドシェア」を巡る議論が本格化してきた。地域や観光地、深夜の都市部などでタクシーが不足する中、自動車による移動の手段を確保することは、日々の暮らしを支える上で喫緊の課題だ。実効性のある政策を早急に打ち出してほしい。

 制度設計がどうであろうと、安全性の確保や事故対応の保険整備などは決してゆるがせにしてはならない。雇用や賃金などへの影響から懸念を表明しているタクシー業界にも配慮しなければならないが、政策立案の立脚点は、乗客にとっての利便性向上と、公共交通業界の競争促進にあることは確認しておきたい。

 担当閣僚は慣例打破などで成果を上げた突破力に定評がある河野太郎デジタル相だ。検討の舞台となる規制改革推進会議の作業部会が6日に開かれ河野氏は「守るべきは規制ではなく、国民の移動の自由だ」と強調した。言行一致が求められることは言うまでもない。

 年内に報告をまとめるという。まずは目指す将来的な公共交通インフラの姿を展望し、課題を具体的に列挙することが最低限の義務だろう。 

 自家用車を使って有償で客を運ぶサービスは既に米国、中国、東南アジアなどで深く浸透、人々の足として重宝されている。米配車大手ウーバーが代表的な企業だ。しかし日本では安全性への不安が根強く「白タク行為」として道路運送法で原則禁止されている。

 多くの国々で普及しているサービスがなぜ、日本では禁止されたままなのか。時代に合わなくなった規制が新規参入を阻んでいる構図も透けてみえるが、現状を考えると、一足飛びにウーバーのような自由度の高いサービスを解禁すれば、各方面に混乱を起こしかねない。

 そうした中で、とりあえず参考になりそうなのが、過疎地など交通インフラが貧弱な地域で、例外的に一般ドライバーが有償で客を運ぶことが認められている「自家用有償旅客運送」制度だ。自治体や民間非営利団体(NPO)が運営主体となり、運行管理や車両整備を担っている。当面はこの制度を基にした仕組みが現実的だろう。

 この問題の起点はタクシー運転手不足だ。業界が訴える旅客運送に必要な2種免許取得手続きの簡素化にも応えるべきだ。 ホンダは自動運転車両を使った無人タクシー事業を2026年に始める。NTTも自動運転事業に参入する。移動サービスはその姿を大きく変えるだろう。そこに商機が生まれ新たな成長の芽が出てくるのではないか。

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