宮崎日日新聞賞
2023年10月26日

第59回宮崎日日新聞賞の贈呈式がきょう、宮崎市で開かれる。科学、文化、教育、産業、社会、国際交流の6部門で、2個人4団体が受賞する。地域に根差した活動、長年の努力と独自の視点は関係者のみならず、地域全体に活力と励みを与えてくれる。心から祝福したい。
特に若い世代の行動と存在は希望そのものだ。教育賞に輝いたG7宮崎農業大臣会合「高校生の提言」プロジェクトチームは、県立高14校の20人で構成。世界の農業事情を学び、県内の農場で研修を受けるなどした上で、将来の持続可能な農業を考案。4月に開催された会合で提言し、高い評価を得た。足元の現状を踏まえ、一方で国際的視野を持ち解決策を導く経験は、メンバーの今後の人生や進路にきっと生かされるに違いない。
人手不足に悩む畜産業界で期待されるのが、科学賞の宮崎大工学部・川末紀功仁(きくひと)教授(58)=宮崎市=が開発した、豚の体重を非接触で測る装置。重労働である家畜の体重測定の省力化や人手不足の解消に一役買いそうだ。産業賞も農業分野からの選出となり、国産ウーロン茶の産地化、高品質安定化に取り組んだ県総合農業試験場茶業支場=川南町=に贈られる。
コロナ禍や軍事クーデター発生前からミャンマーとの交流を重ね、技術支援に尽力した国際協力機構(JICA)元アドバイザーの富山隆志さん(70)=延岡市=には国際交流賞。技術者らを同市での研修に招くなど奔走し、草の根で達成感や悩みを分かち合ってきた。
社会賞には、本県のエイブル・アート(障がい者芸術)を牽引(けんいん)してきたアートステーションどんこや=宮崎市。手探りの当初から約30年を経て、創作活動やワークショップなど活動は多彩さを増した。障がいの有無や年齢、性別といった社会に存在するさまざまなバリアーを解き放とうとする試みは地域社会に刺激を与えてきた。
文化賞には「五ケ瀬の荒踊」を継承する五ケ瀬町坂本地区住民の皆さん。同地区に限らず、人口減や高齢化は中山間地域での行事や祭りの維持に影響している。今回の受賞が他の山村地域にも元気をもたらすものになればうれしい。
宮崎日日新聞賞は本紙創刊25周年を記念し、1965年に創設された。歴代受賞者たちは、続発する地域課題や困難に向き合い、地域づくりに奮闘してきた人々である。
「カルチャー(文化)」の語源に「耕す」があるように、土を耕し種をまいた所にのみ地域創造文化の花が咲く。地域の価値を耕し続ける人々のさらなる活躍を願う。