細田議長が辞任表明
2023年10月17日

衆参両院議長は、首相、最高裁長官と並び「三権の長」と呼ばれ、国会議員の範となるような高い識見と品格が求められるのは言うまでもない。だが、それを最後まで見せることはなかった。細田博之衆院議長が記者会見し、体調不良を理由に辞任を表明した。
焦点の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係について、従来の衆院議院運営委員会の与野党代表を集めた非公開の場での説明をなぞり「特別な関係はない」と強調、率先して疑念を解消する姿勢はない。教団と政治の「闇」を置き去りにしたまま、議長を退くことで幕引きさせるわけにはいかない。
細田氏は、故安倍晋三元首相とともに旧統一教会とのかかわりが深いとされる清和政策研究会(安倍派)に所属、会長も務めた。2019年には、韓鶴子(ハンハクチャ)総裁も出席した教団の友好団体主催の会合で「会の中身の内容をさっそく安倍総理に報告したい」とあいさつしたほか、国政選挙で教団票を差配したか、ないしはそれを知っていた可能性も指摘されている。
過去3回の文書や密室での説明では、教団側の会合に計8回出席したことなどを認めたが、票の差配や選挙での組織的支援や動員の受け入れは否定。記者会見を一貫して拒んできた。
旧統一教会問題で問われるのは、霊感商法や教団への多額献金による被害者の救済と、政策決定への影響、教団の名称変更、社会問題化しながらなぜ長年メスを入れられなかったのか、という政治との関係だ。前者は着手したものの、後者に関して先頭に立つべき国権の最高機関が役割を果たしたとはとても言えまい。
これまでの証言の中で見逃せないのは、「安倍氏は大昔から教団と関係が深い」と語った点だ。細田氏は、安倍氏亡き後、「教団と政界」を知り得る立場の一人とも言える。議長ポストに就いていることを盾に詳細の言及を避けてきたが、今後は一議員に戻る。つまびらかにし、解明する務めを負っている。
細田氏を巡る問題は、旧統一教会に関するものだけではない。自身や同僚議員の待遇が低いとぼやき、議長の品格をおとしめた。週刊誌が報じたセクハラ疑惑も説明責任を果たさず、辞任会見を迎え、「単なるうわさ話」とはねつけた。
疑念を持たれながら、説明から逃げ回り、最後に応じた記者会見も出席者を制限し、無責任なあしき先例を残した。会派を離脱していたことを理由に、岸田文雄首相も自民党も細田氏を調査の対象から外し、説明は本人に委ねてきた。もはや”言い訳”は通用しない。矜持(きょうじ)と品性を示してもらいたい。