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円安150円台

2023年10月7日
◆早急に大規模緩和を見直せ◆

 円相場は一時、1ドル=150円台と約1年ぶりの円安ドル高水準をつけた。背景にあるのが日銀の大規模な金融緩和だ。

 日本経済の下支えに緩和政策は必要だが、高インフレの下で過度の低金利を続けることは副作用を増幅させる。足元の円安が該当する。円安は物価高をさらに悪化させかねない。日銀は弊害の抑制へ大規模緩和の見直しを急ぐべきだ。

 円安には自動車など輸出企業の利益増や、それによる賃上げのプラス効果の半面、輸入コスト増による物価上昇のデメリットが伴う。政府・日銀が昨年9月、約24年ぶりの円買いドル売り介入に踏み切ったのも物価対応のためだった。足元の状況はこの時に似ている。

 国内の消費者物価(生鮮食品を除く)は食品などの値上げが響き、8月まで12カ月続けて3%以上の上昇率を記録した。物価を左右する原油価格は産油国の協調減産などで再び高騰している。ここに円安が重なれば原油だけでなく、穀物など輸入原材料のコスト全体を押し上げる恐れがある。

 今の円安は、日本と米欧の金融政策の違いによる金利差拡大に主因がある。米欧は昨年来、インフレ退治のために利上げを実行。それでも物価は沈静化せず、金融引き締めの長期化を余儀なくされている。

 これに対して日銀は、長期金利を0%程度に固定する緩和策の部分修正を7月に実施しながらも、大規模緩和は基本的に変更せず円が売られやすくなっていた。この状況では、介入で一時的に勢いを弱められても、円安傾向を変えるのは難しい。

 金融政策の方向性の違いに加えて、円安の背景には日本経済の構造的な要因がある点も見落とさないようにしたい。

 石油・ガスをはじめ食品などの原材料を輸入に頼る点は、外貨での支払いが円売りにつながりやすい。自動車のような輸出競争力のある製品が生まれにくくなった点や、企業が海外投資で得た外貨を円に交換しなくなった点なども、円安の背景に挙げられよう。

 日銀の「2%目標」を上回る物価高になって1年半近く。政府が「デフレではない状況」と認めるのに日銀はインフレに手を打たず、大規模緩和を続けている。対応が後手に回っており、2%目標とともに、マイナス金利のような極端な緩和策が現状でも必要なのか、この機に問いたい。

 岸田文雄首相は、10月末をめどにまとめる経済対策に物価高への対応を盛り込む方針だ。電気・ガスやガソリンの価格抑制策に焦点が当たるが、家計や中小企業に打撃の大きい円安を見過ごしていいはずはあるまい。

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