性犯罪歴と就業制限
2023年8月16日
◆さまざまな視点から議論を◆
子どもと接する仕事に就こうとする人に性犯罪歴がないかを確認するため「日本版DBS」と呼ばれる公的な仕組みの導入に向け、こども家庭庁の有識者会議が詰めの議論を進めている。英国でDBSという政府系の機関が犯罪歴をデータベースで管理し、子どもに関わる職種に就く人に無犯罪証明書を発行する制度をモデルにしている。
議論を踏まえ、政府は秋に見込まれる臨時国会に関連法案を提出する方針だ。子どもの性被害は後を絶たない。文部科学省では、児童生徒へのわいせつ行為で懲戒免職となり免許を失った教員の情報をデータベースに登録し、教育委員会などが採用時に検索する制度の運用が4月に始まった。同様に保育士へのチェックも強化され、いずれも復職は厳しく制限されている。
しかし、まだ十分ではないとの声は根強い。部活動の外部コーチや学習塾の講師、スポーツクラブの指導員、放課後児童クラブの職員、ベビーシッターなども含め、規制の対象や内容が焦点になる。
DBSは「Disclosure and BarringService」の略。「前歴開示・前歴者就業制限機構」と訳される。英国では職種にかかわらず、事業者が就業希望者の犯歴をDBSに照会し、犯罪歴証明書を求めることができる。特に子どもに関わる職種には犯歴照会が義務付けられ、ボランティアも対象になる。
日本版では、教員などになる人が自ら無犯罪証明書の発行を受けて就業先に提出するという手続きが想定されている。学校や保育所、幼稚園、児童養護施設の教員や保育士に限らず、それ以外の職員も含め性犯罪歴の確認を義務付け、犯歴がある場合は一定の期間、就労できないようにするとみられる。
だが課題は多い。職業選択の自由はもとより、禁錮以上の刑の執行が終わり何事もなく10年が経過すれば、刑の言い渡しは効力を失うと「刑の消滅」を規定している刑法との整合性が問題になる。文科省は犯歴検索システムの導入を前に、処分から3年たてば可能な教員免許の再取得をできなくすることも検討したが、この規定が壁になり、断念した経緯がある。
更生の道を閉ざしてはならないが、保護者にとっては、性犯罪に手を染めた教員や保育士らが復帰するなど、とても受け入れることはできないだろう。
性犯罪は子どもの心に深刻な傷を残す。大人になっても幼いころの被害で苦しみ続ける人は多い。子どもを守るため、加害者の権利をどこまで制限できるか、被害を早期発見できるかなど、さまざまな視点から議論を深めていかなくてはならない。
子どもと接する仕事に就こうとする人に性犯罪歴がないかを確認するため「日本版DBS」と呼ばれる公的な仕組みの導入に向け、こども家庭庁の有識者会議が詰めの議論を進めている。英国でDBSという政府系の機関が犯罪歴をデータベースで管理し、子どもに関わる職種に就く人に無犯罪証明書を発行する制度をモデルにしている。
議論を踏まえ、政府は秋に見込まれる臨時国会に関連法案を提出する方針だ。子どもの性被害は後を絶たない。文部科学省では、児童生徒へのわいせつ行為で懲戒免職となり免許を失った教員の情報をデータベースに登録し、教育委員会などが採用時に検索する制度の運用が4月に始まった。同様に保育士へのチェックも強化され、いずれも復職は厳しく制限されている。
しかし、まだ十分ではないとの声は根強い。部活動の外部コーチや学習塾の講師、スポーツクラブの指導員、放課後児童クラブの職員、ベビーシッターなども含め、規制の対象や内容が焦点になる。
DBSは「Disclosure and BarringService」の略。「前歴開示・前歴者就業制限機構」と訳される。英国では職種にかかわらず、事業者が就業希望者の犯歴をDBSに照会し、犯罪歴証明書を求めることができる。特に子どもに関わる職種には犯歴照会が義務付けられ、ボランティアも対象になる。
日本版では、教員などになる人が自ら無犯罪証明書の発行を受けて就業先に提出するという手続きが想定されている。学校や保育所、幼稚園、児童養護施設の教員や保育士に限らず、それ以外の職員も含め性犯罪歴の確認を義務付け、犯歴がある場合は一定の期間、就労できないようにするとみられる。
だが課題は多い。職業選択の自由はもとより、禁錮以上の刑の執行が終わり何事もなく10年が経過すれば、刑の言い渡しは効力を失うと「刑の消滅」を規定している刑法との整合性が問題になる。文科省は犯歴検索システムの導入を前に、処分から3年たてば可能な教員免許の再取得をできなくすることも検討したが、この規定が壁になり、断念した経緯がある。
更生の道を閉ざしてはならないが、保護者にとっては、性犯罪に手を染めた教員や保育士らが復帰するなど、とても受け入れることはできないだろう。
性犯罪は子どもの心に深刻な傷を残す。大人になっても幼いころの被害で苦しみ続ける人は多い。子どもを守るため、加害者の権利をどこまで制限できるか、被害を早期発見できるかなど、さまざまな視点から議論を深めていかなくてはならない。