ヤングケアラー支援
2023年7月22日

家族の介護や世話を日常的に担う「ヤングケアラー」と呼ばれる子どもについて、厚生労働省は介護保険の新たな基本指針案で支援強化に取り組む方針を示した。年内に決定し、介護の実施主体である市区町村が策定する2024年度から3年間の事業計画に反映させる。基本指針にヤングケアラーの支援を盛り込むのは初めてのことだ。
21~22年に公表された国の調査によると、小学6年生で6・5%、中学生は5・7%、高校生も4・1%が「世話をしている家族がいる」と答えた。クラスに1~2人いる計算になる。25年には団塊の世代が全員75歳以上になって介護を必要とする高齢者が増えると見込まれ、負担軽減が課題になっている。
ただ家族の世話をごく当たり前の手伝いと捉えていて、それを負担と自覚していない子どもは少なくないとされ、家族の事情を周囲に知られたくないと思う子どももいるようだ。実態をつかみにくいため、支援につなげるのが難しいという。介護も含め地域の情報が集まる自治体の役割が重要になってくる。
大人に代わって高齢の祖父母や病気、障害のある親、幼いきょうだいの面倒を見る負担は大きい。国の調査で小学生ケアラーの場合、世話の頻度は「ほぼ毎日」が半数を超え、「自由に使える時間がほしい」「勉強を教えてほしい」といった自由記述があった。中高生も「ほぼ毎日」が半数程度に上った。
県の調査では小学生と中学生がそれぞれ3・8%、高校生が3・2%という結果だった。学業や将来の進路などに及ぼす影響が懸念される。学校現場や介護、福祉、医療など各部門が連携して相談・支援の態勢を充実させ、ケアラー本人がどのような助けが必要か孤立させない仕組みを整えたい。
調査をした自治体は2月末時点で全体の15%程度にとどまり、厚労省は改めて細やかな調査実施を要請する通知を全国に出した。
調査が、潜在化しやすいケアラーの早期発見と支援の基礎になるのは言うまでもない。積極的に進め、それを基に一人一人のニーズをしっかりと把握し、学習や就労の支援はもとより、食事の準備や洗濯、保育所送迎など、きめ細かい福祉サービスに着実につなげていかなくてはならない。
「ヤングケアラーという言葉を聞いたことがない」と答えた人が27・2%に上り、「聞いたことはあるが、意味が分かっていない」も15・9%で、認知度の低さも懸念材料だ。周囲の気づきや支援が遅れてしまうと懸念されており、ヤングケアラー問題の周知に一層力を注ぐことも求められる。