子ども政策財源
2023年6月7日
◆倍増への道筋示さず棚上げ◆
政府は「次元の異なる少子化対策」の具体的な財源確保策について結論を年末まで持ち越した。2024年度からの3年間に実施する児童手当拡充などの「加速化プラン」は年3・5兆円の追加予算を見込む。その財源は社会保険料への上乗せや社会保障を含む歳出カットで捻出する方向だ。しかし衆院解散・総選挙が取り沙汰される中、国民の負担増や社会保障費削減に与党内で反発が強まったことに配慮した。
岸田文雄首相は施政方針演説などで「6月の骨太方針までに将来的な子ども予算倍増に向けた大枠を提示する」と繰り返してきた。倍増には年5兆円弱の追加予算が必要だが、この財源確保策も「30年代初頭までに目指す」として具体的道筋を示さなかった。公約違反と言わざるを得ない。子ども予算をスウェーデンなど欧州諸国並みに引き上げる目標を掲げながら、防衛費増額では決断した増税の選択肢を排除するのはなぜか。
財源持ち越し、消費税増税封印の一方、首相は24年度からの追加予算について、当初検討されていた3兆円に5千億円積み増しを指示した。選挙前には国民に「痛み」を隠し、大盤振る舞いしようというのか。
当初3年間は、児童手当など経済的支援の1・5兆円を中心に年3・5兆円が追加で必要になる。政府はこの財源を、公的医療保険料に上乗せで徴収する支援金により企業負担分と合わせ1兆円、医療や介護の歳出改革で1・1兆円、既存の税収から0・9兆円―などとする方向だった。だが結局は、歳出改革で国民の実質的な追加負担をなくすことを目指すとして結論を棚上げにした。
28年度を目標とする安定財源確保までは「つなぎ国債」でしのぐという。恒久的に続くはずの少子化対策が自転車操業のような構図でいいはずがない。
加速化プランに見込む財源では、現役世代から75歳以上の高齢者までが支払う医療保険料への上乗せ徴収は世代間の公平性があるとも言える。だが、現役世代の保険料のアップは、せっかく機運が上向いてきた賃上げを相殺してしまう難点がある。
社会保険料、歳出改革、既存税収では3兆円超は見通せても、子ども予算倍増に至るまでには限界がある。岸田政権は防衛費も27年度までに現行水準から約17兆円増額する。その財源は歳出改革、税外収入などで足りない分は法人、所得、たばこ各税増税などで賄う。少子化対策でもこのような「税を含むベストミックス」を目指すほかないのではないか。この「現実」を隠して選挙に臨むための結論持ち越しとすれば、有権者に不誠実と言うほかない。
政府は「次元の異なる少子化対策」の具体的な財源確保策について結論を年末まで持ち越した。2024年度からの3年間に実施する児童手当拡充などの「加速化プラン」は年3・5兆円の追加予算を見込む。その財源は社会保険料への上乗せや社会保障を含む歳出カットで捻出する方向だ。しかし衆院解散・総選挙が取り沙汰される中、国民の負担増や社会保障費削減に与党内で反発が強まったことに配慮した。
岸田文雄首相は施政方針演説などで「6月の骨太方針までに将来的な子ども予算倍増に向けた大枠を提示する」と繰り返してきた。倍増には年5兆円弱の追加予算が必要だが、この財源確保策も「30年代初頭までに目指す」として具体的道筋を示さなかった。公約違反と言わざるを得ない。子ども予算をスウェーデンなど欧州諸国並みに引き上げる目標を掲げながら、防衛費増額では決断した増税の選択肢を排除するのはなぜか。
財源持ち越し、消費税増税封印の一方、首相は24年度からの追加予算について、当初検討されていた3兆円に5千億円積み増しを指示した。選挙前には国民に「痛み」を隠し、大盤振る舞いしようというのか。
当初3年間は、児童手当など経済的支援の1・5兆円を中心に年3・5兆円が追加で必要になる。政府はこの財源を、公的医療保険料に上乗せで徴収する支援金により企業負担分と合わせ1兆円、医療や介護の歳出改革で1・1兆円、既存の税収から0・9兆円―などとする方向だった。だが結局は、歳出改革で国民の実質的な追加負担をなくすことを目指すとして結論を棚上げにした。
28年度を目標とする安定財源確保までは「つなぎ国債」でしのぐという。恒久的に続くはずの少子化対策が自転車操業のような構図でいいはずがない。
加速化プランに見込む財源では、現役世代から75歳以上の高齢者までが支払う医療保険料への上乗せ徴収は世代間の公平性があるとも言える。だが、現役世代の保険料のアップは、せっかく機運が上向いてきた賃上げを相殺してしまう難点がある。
社会保険料、歳出改革、既存税収では3兆円超は見通せても、子ども予算倍増に至るまでには限界がある。岸田政権は防衛費も27年度までに現行水準から約17兆円増額する。その財源は歳出改革、税外収入などで足りない分は法人、所得、たばこ各税増税などで賄う。少子化対策でもこのような「税を含むベストミックス」を目指すほかないのではないか。この「現実」を隠して選挙に臨むための結論持ち越しとすれば、有権者に不誠実と言うほかない。