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カード不正被害

2023年6月6日
◆警戒度高めて自らを守ろう◆

 手軽なキャッシュレス決済の普及とともに、クレジットカードが不正に利用される被害が急増している。週末などはネット通販でのカードの利用機会が増える一方、カード情報の詐取を狙ったフィッシングメールの着信も増加しがちだ。被害の防止へ警戒度を一段引き上げたい。

 日本クレジット協会によると、2022年の不正利用被害額は436億円に上り、過去最悪を更新した。「番号盗用」による被害がほとんどで、前年より100億円余り増加。被害拡大に歯止めのかからない危機的状況と言っていい。

 背景には、新型コロナウイルスの流行をきっかけにした、ネット通販などでのキャッシュレス決済の広がりがあるとみられている。経済産業省がまとめた22年のキャッシュレス決済額は111兆円と、初めて100兆円を突破。8割以上をクレジットカードが占めた。

 カード利用者は誰でも被害に遭う危険性があり、それを防ぐには手口を知っておくことが大切だ。代表的なのは偽メールによる番号盗用である。

 実在する企業などを差出人に詐称したメールを送りつけ、その中に記された偽のウェブサイトに被害者を誘導。カード番号やパスワードなどの個人情報を入力させ、だまし取るやり方だ。盗まれたカード番号や個人情報が使われ、高額商品購入などの被害につながる。

 監視団体のフィッシング対策協議会によると、22年のフィッシング報告件数は約97万件と前年より8割以上増加し、過去最多を記録した。偽メールに詐称された差出人は大手通販サイトや中央官庁、宅配便会社、金融機関など多岐にわたる。誘導する偽サイトも本物そっくりで見分けが難しい。

 同協議会や警察庁などは被害を防ぐため、いったん立ち止まって考え、怪しいメールは開かず、安易に中のリンクをクリックしたり添付ファイルを開いたりしないよう呼びかけている。

 事業者らによる団体は今年3月、安全対策のガイドラインを改訂。ネット通販など電子商取引(EC)加盟店に、本人認証を厳格化した規格の25年3月末までの導入を求めた。新規格では例えば、カードの不正利用が疑われる場合、「ワンタイムパスワード」の入力などが本人確認に必要となる。指紋や顔を照合する「生体認証」の利用も広がる見通しだ。

 先行する欧州連合(EU)では、本人認証の強化により不正利用の発生割合がほぼ半減したとの報告があるという。利用者によってはネットでの買い物時に、今までより認証手続きが煩雑となる場合が出てこよう。自らを守るためと理解したい。

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