国会終盤入り
2023年5月11日
◆防衛費の負担増 議論尽くせ◆
国会は大型連休が明けて終盤に入り、会期は残り1カ月余りになった。日本の行方を左右する政治課題を抱える中、重要なのは、将来に禍根を残さないために論議を尽くすことだ。
自民党は先の衆参5補選で4勝した。岸田文雄首相は選挙を受けて、防衛力の抜本的強化や少子化対策などについて「(有権者から)しっかりとやり抜けという叱咤(しった)激励をいただいた」と述べた。しかし、安全保障政策の転換につながる防衛費の大幅増額や、財源確保のための増税方針には異論が根強い。
共同通信が3~4月に行った安保問題に関する世論調査によると、2023年度からの5年間で、防衛費に従来の1・5倍超の43兆円を充てる計画について、58%が「適切ではない」と回答した。
専守防衛の理念から逸脱が懸念される反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有には61%が賛成する。だが、政府が行使事例とともに日本国内に戦火が及ぶ可能性を率直に明らかにすれば、賛否が逆転する事態もあり得る。
国会では、国有財産の売却などの税外収入を基にした「防衛力強化資金」を創設する特別措置法案が審議中だ。首相はその質疑を通じ、防衛力強化に伴うさまざまな疑問に、誠実かつ具体的に答えるべきだ。
首相が掲げる「次元の異なる少子化対策」を巡っては3月末、政府が児童手当の所得制限撤廃や育児休業給付引き上げなどを明記した試案を公表した。
対策実施には数兆円かかるとされるが、財源確保策は、会期末と同時期の6月に大枠を明らかにするとし、国会審議や選挙戦で野党の追及を回避した。
試案は衆参補選や統一地方選を意識した自民党の主張に沿う総花的な内容だ。その上、国民の負担増が見込まれる財源が不明確では、終盤国会で議論が深まるわけがない。
政府、与党は60年を超える原発の運転を可能にする関連法案も今国会で成立させる構えだ。
だが、対象となる原発や運転延長を認める条件は不明点が多い。一部野党は賛成しているものの、これまでの審議で東京電力福島第1原発事故を経験した国民の不安が払拭されたとは言いがたい。このほか入管難民法改正案に対しては国際基準に劣るとの指摘があり、LGBTなど性的少数者への理解増進法案は自民党の反対で国会に提出さえされていない。
広島市で開催される先進7カ国首脳会議(G7サミット)後に、岸田首相が早期の衆院解散・総選挙に踏み切るとの観測がある。このまま衆院選に突入すれば、首相が施政方針演説で誓った「正々堂々の議論」は成り立つまい。
国会は大型連休が明けて終盤に入り、会期は残り1カ月余りになった。日本の行方を左右する政治課題を抱える中、重要なのは、将来に禍根を残さないために論議を尽くすことだ。
自民党は先の衆参5補選で4勝した。岸田文雄首相は選挙を受けて、防衛力の抜本的強化や少子化対策などについて「(有権者から)しっかりとやり抜けという叱咤(しった)激励をいただいた」と述べた。しかし、安全保障政策の転換につながる防衛費の大幅増額や、財源確保のための増税方針には異論が根強い。
共同通信が3~4月に行った安保問題に関する世論調査によると、2023年度からの5年間で、防衛費に従来の1・5倍超の43兆円を充てる計画について、58%が「適切ではない」と回答した。
専守防衛の理念から逸脱が懸念される反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有には61%が賛成する。だが、政府が行使事例とともに日本国内に戦火が及ぶ可能性を率直に明らかにすれば、賛否が逆転する事態もあり得る。
国会では、国有財産の売却などの税外収入を基にした「防衛力強化資金」を創設する特別措置法案が審議中だ。首相はその質疑を通じ、防衛力強化に伴うさまざまな疑問に、誠実かつ具体的に答えるべきだ。
首相が掲げる「次元の異なる少子化対策」を巡っては3月末、政府が児童手当の所得制限撤廃や育児休業給付引き上げなどを明記した試案を公表した。
対策実施には数兆円かかるとされるが、財源確保策は、会期末と同時期の6月に大枠を明らかにするとし、国会審議や選挙戦で野党の追及を回避した。
試案は衆参補選や統一地方選を意識した自民党の主張に沿う総花的な内容だ。その上、国民の負担増が見込まれる財源が不明確では、終盤国会で議論が深まるわけがない。
政府、与党は60年を超える原発の運転を可能にする関連法案も今国会で成立させる構えだ。
だが、対象となる原発や運転延長を認める条件は不明点が多い。一部野党は賛成しているものの、これまでの審議で東京電力福島第1原発事故を経験した国民の不安が払拭されたとは言いがたい。このほか入管難民法改正案に対しては国際基準に劣るとの指摘があり、LGBTなど性的少数者への理解増進法案は自民党の反対で国会に提出さえされていない。
広島市で開催される先進7カ国首脳会議(G7サミット)後に、岸田首相が早期の衆院解散・総選挙に踏み切るとの観測がある。このまま衆院選に突入すれば、首相が施政方針演説で誓った「正々堂々の議論」は成り立つまい。