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ミャンマー民主派死刑

2022年8月3日
◆残虐な弾圧 直ちに停止せよ◆

 国軍が昨年クーデターを起こしたミャンマーで、民主活動家や元議員ら4人の死刑が執行された。地元メディアによると、政治犯の死刑執行は1976年以来で、それ以外の死刑執行も90年以降なかったという。

 4人のうち著名な民主活動家のチョーミンユ氏は、国軍に政権を奪われ収監中のアウンサンスーチー氏と共に1988年の民主化運動を率いた。人権団体によると、昨年2月の政変後、117人が死刑を宣告されたという。犠牲者が今後も続くことが憂慮される。全員の執行を即時停止させるよう国際社会は圧力を強めなければならない。

 国軍は抗議デモを抑え込むため、本来守るべき国民に銃口を向けて多数の死傷者を出し、重火器で村を焼き払うといった蛮行を重ねている。約10年間の民主化プロセスの成果を台無しにした上、その前に20年以上続いた旧軍事政権下でさえ国民が経験しなかった非道な行為がまかり通っている。

 人権と法の支配を踏みにじる今回の死刑執行を日米欧などが一斉に非難したのは当然だ。ミャンマーが加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)も執行しないよう強く求めていた。今年の議長国カンボジアは「深く失望しており、非難する」との議長声明を発表した。

 民主派がつくった挙国一致政府(NUG)は非暴力路線を転換し「国民防衛隊」を結成。昨年9月ごろから国軍にゲリラ的な攻撃を強めており、死刑執行はその報復と見せしめの側面がある。報復の連鎖を断ち切るためにはASEANによる仲介受け入れと対話開始が不可欠だ。

 国軍のミンアウンフライン総司令官は昨年、ASEANの臨時首脳会議に自ら出席し、ASEANの仲介を受け入れ、民主派と対話して事態を打開するという5項目合意を受諾した。だが全く履行しておらず、ASEANの首脳会議などから締め出され、孤立を深めている。

 それでも国軍は、ロシアのウクライナ侵攻によってミャンマーへの国際社会の関心がそらされ、欧米とロシア・中国の対立が深まっていることを利用して孤立回避を狙っているようだ。

 日本政府はこれまで、ミャンマー国軍の弾圧が国際的な非難を浴びても、制裁を連発する欧米とは一線を画し、国軍と意思疎通を続けて改善を促す姿勢を取ってきた。これには人権軽視という批判もつきまとっており、日本の外交努力を丁寧に説明する必要がある。

 ミャンマー経済を支える日本の政府開発援助(ODA)は、クーデターを受けて新規事業を停止しているが、状況が改善しなければ人道支援を除いて既存の継続事業も中止すべきだ。

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