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障害者差別改正法

2021年9月11日
◆社会参加阻む要因取り除け◆

 政府は5月に成立した改正障害者差別解消法の施行を巡り、議論を本格化させる。障害を理由とする差別を禁じる解消法は2016年4月に施行され、車いすを使う人のため段差にスロープを設置するなど、障害者の社会参加を阻むさまざまな要因を取り除いたり、できるだけ小さくしたりする「合理的配慮」を国や自治体に義務付けた。

 改正法は義務を企業や店舗など民間事業者にも拡大した。合理的配慮は▽施設のバリアフリー化▽聴覚障害者と筆談で意思疎通を図る▽視覚障害者に書面を読み聞かせる▽知的障害者に分かりやすい言葉で説明する―と多岐にわたり、政府はまず、どんなときに配慮が必要かを例示した基本方針を改定する。

 それを基に事業者が設備の改修や人手の確保などを進め、3年以内の施行を目指す。だが車いすのまま乗車できるようスロープを備えたユニバーサルデザイン(UD)タクシーを利用しようとしても配車や乗車を断られたり、盲導犬を連れていると飲食店に入店させてもらえなかったりする例は後を絶たない。

 虐待に関する相談・通報も年々増え、法施行から5年余りたってもなお、障害者はさまざまな場面で生きづらさを抱えている。東京パラリンピックが掲げた「共生社会の実現」に向け、改正法施行をできる限り前倒しして支援拡充を加速させたい。

 国土交通省は8月、UDタクシーでスロープ設置の手間などを理由に車いすの人から追加料金を取るのは差別的な扱いに当たるとして青森、水戸、広島の3市にあるタクシー会社3社に撤回するよう指導。愛知県豊田市ではUDタクシーが車いすの人の乗車を拒否したため、タクシー会社に車両の使用を1カ月間停止する行政処分をした。

 国はUDタクシーの普及に力を入れ、事業者に補助金を出して導入を後押ししてきた。だが運転手がスロープの扱いに慣れていないことなどがネックになっているという。

 また視覚障害者の支援団体によると、19年4月から20年2月にかけ、調査した92人のうち57人が盲導犬の同伴を理由に飲食店や宿泊施設、スーパーなどから入店を断られた。

 障害者への虐待も相次ぐ。19年度、自治体に寄せられた相談・通報は8519件で過去最多。障害のある生徒が高校入試で定員に空きがあるのに不合格となる「定員内不合格」の問題も各地で指摘されている。

 一方で、新型コロナウイルスの感染拡大に終わりが見えない中、飲食業を中心に負担増を懸念する声もある。政府は事業者への公的支援などにも目配りしながら、着実に歩を進める必要がある。

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