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大谷選手の活躍

2021年7月16日
◆楽しさがスポーツの原点だ◆

 大谷翔平選手が米大リーグのオールスター戦で「二刀流」を実現した。投手としても打者としても活躍することを目指す挑戦は今季、一段と質の高いものになった。笑顔で心の底から楽しそうにプレーする姿は全米にファンを広げた。それだけでなく、多くの選手がその躍動に驚き、敬意を寄せる。

 新型コロナウイルスの感染がやまない重苦しい空気の中で、連日の活躍は職場や学校で話題に上る。コロナ禍だからこそ、活躍が一層輝いて見えるのかもしれない。スポーツは沈んだ心を軽くする。大谷選手はスポーツの持つ可能性を広げた。

 大谷選手は今季前半戦ではメジャー最多の33本塁打を記録した。その打球の速度と、ときには高々と外野スタンド上段に打ち込むパワーと飛距離は大きな魅力だ。投手としての4勝1敗の成績は球宴に出場するにはやや物足りないものだが、選手間投票で選出された。「二刀流」を球宴でも見たいとの思いが、ファンにも選手にも広がった。

 そうした願いを主催者の大リーグは受け止め、すかさず特別ルールを設けた。指名打者は本来、投球も守備もしない、打撃に専念する選手を指すのだが、大谷選手は「1番、指名打者」となりながら、先発投手で出場することが認められた。

 これは、1933年に始まった長い球宴の歴史にとって大きな足跡になった。これを機に米国でも日本でも、二刀流を目指す若者が増えるだろう。指導者は固定観念を捨て、選手の才能に目を凝らし、その希望に耳を澄ませる必要がある。

 チームを率いる者は、選手の背中を押すようでありたい。今回の球宴でア・リーグを率いたキャッシュ監督は大谷選手の二刀流出場が決まった時点で「これはファンが見たかったことであり、私も見たかったことだ」と話した。

 それにしても、大谷選手の挑戦意欲はどこから湧いてくるのだろう。大リーグ1年目のオフに右肘を手術した。その回復をじっくり待つために2年目は打者に専念しながら、終盤に左膝を痛め、その手術もした。

 長いシーズンを戦い抜くにはきめ細かい身体のケアと、全般的な体力の強化に取り組まなければならない。二刀流の挑戦を続けるための身体的、精神的負担はかなり大きいはずだが、大谷選手はおくびにも出さない。

 今の輝きは楽しさにあふれている。エンゼルスのマドン監督は、大谷選手が楽しく二刀流に挑戦している様子を見ると、自分自身も楽しくなると話す。楽しいからやる。喜んでやる。スポーツの原点がここにあることを大谷選手から教えられているような気がする。

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