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県が路線バス維持支援

2021年6月10日
◆持続可能な交通網模索して◆

 宮崎交通が運行する赤字路線バスのうち市町村をまたぐ「地域間幹線」を維持するため、県が一般会計補正予算案に約1億6千万円を計上し支援する方針を発表した。14日開会の6月定例県議会に提案する。

 人口減や過疎化で利用が低迷し、コロナ禍によってさらに経営状況が悪化した路線バス事業=写真。同社が運行する344系統のうち約7割が赤字路線で、国や県の補助金によって支えられてきた。それでもなお毎年2億円程度の同社負担が発生しており、親会社のグループ内で補填(ほてん)してきたのが現状だ。

 高齢者や子ども、学生など交通手段が限られる交通弱者の移動を支える公共交通は、住民生活に直結する重要な社会インフラだ。過疎地域の高齢者らは移動手段が絶たれればたちまち買い物難民や医療難民に陥る可能性が高く、住民の足の維持は不可欠なものと言える。

 一方で、コロナ禍で経営不振に陥る企業が激増する中、「1社優遇」との批判も免れないだろう。県は昨年6月にも今回と同様の趣旨で、地域間幹線維持に充てるための約1億3200万円を補正予算に計上、同社への支援を行っている。県総合交通課は「結果的に宮崎交通1社への支出だが、企業支援という捉え方ではない。あくまでも地域公共交通機関の維持が目的だ」と説明する。

 ”流血”のたびに緊急止血策として税金投入が求められる事態は避けなければならない。県は厳しい視線が注がれていることを認識し、公益性や公平性の観点から説明責任を果たす必要がある。路線バス事業の流血の原因や背景を突き止め、根本的な手当てに着手してほしい。同社のより厳しい経営努力が重要であることは言わずもがなだ。

 県が示した今回の支援方針の内訳は、運行経費(主に燃料代)に約1億3700万円、利用状況の調査費に2500万円。実態調査を基に、将来的にバスの小型化、予約して数人で乗り合わせるデマンド型などの導入も見据えるという。その際、路線廃止や変更、ダイヤ改正など変化が出てくる可能性も大いにある。住民の利便性が損なわれず、持続可能で効率的な運行への変化を待ちたい。

 経済成長期の人口膨張路線の下で敷かれた交通網を、これからの人口減少時代に合わせて再構築する分岐点と言っていい。交通網のデザインが変われば、地域や街の姿も変わる。路線バス事業への公的支援の賛否に加え、中山間地域や住民の暮らし方がどう変わるのかという視点も忘れてはならない。県議会での積極的な議論を期待したい。

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