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天安門事件32年

2021年6月8日
人権擁護と民主化求めたい

 1989年6月4日、中国軍が民主化運動を武力で弾圧し、多数を殺傷した天安門事件から32年がたった。新型コロナウイルスに関する情報統制やスパイ容疑者の摘発、少数民族の同化政策の強化などにより、中国の民主状況は悪化する一方だ。

 7月の共産党創建100年、来年は5年に1度の党大会という「政治の季節」を迎え、習近平国家主席は強権的な締め付けによって、国内の安定を維持し、一党支配の正統性と自らの権威をアピールする構えだ。

 しかし、国内ではネット規制や習氏への権力集中に不満がくすぶり、新疆ウイグル自治区や香港の人権弾圧に関して国際社会の批判も強まる。日米欧は連携して弾圧される人々の側に立ち、中国に対して粘り強く人権擁護を求めていくべきだ。

 コロナ感染は天安門事件以来、中国が政権の存亡に最も危機感を抱いた「国難」とみられる。習政権は厳重な移動制限や病院建設などによる早期制圧を誇示するが、初動の遅れや感染情報の隠蔽(いんぺい)、強引な手法への批判は封じ込めた。

 ウイルスが初めて確認され、都市封鎖された湖北省武漢市の作家、方方氏はネットで「武漢日記」を連載し、地元当局の対応の不備を批判した。日記は海外で出版されたが、中国では事実上の発禁処分となり、方方氏はネットで「愛国主義者」から誹謗(ひぼう)中傷を受けた。

 習氏は2014年の党国家安全委員会の設置以来、反スパイ法や国家安全法、インターネット安全法などを制定し、学校では国家安全や愛国主義教育に力を注ぐ。また、米国や民主派、少数民族活動家らを敵対勢力とみて徹底的な闘争を訴え、確信的に民主化に逆行してきた。

 新疆では、テロや独立派・過激派対策として、ウイグル族を強制収容所に集めて思想矯正や職業訓練を行っている。少数民族への弾圧は容認できない。中国は国連の視察団を受け入れ、実態を明らかにし、人権状況を改善する必要がある。

 香港では民主派を弾圧し、天安門事件の犠牲者への追悼活動も2年連続で禁止した。中国は香港に保障した「一国二制度」「高度の自治」を尊重しなければならない。

 習氏は党創建100年に当たり、目標に掲げてきた貧困脱却を宣言。党大会で総書記3選を果たし、国家主席も3期続ける考えとみられる。野望に向けて政府批判を封じ込め、自らの権威付けを図る狙いのようだ。

 しかし、強権的な手法だけで長期的な政権の安定維持は難しいだろう。中国は国際社会の批判に耳を傾け、非民主的な政治体制の見直しについて検討を始めるべきだ。

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