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コロナと引きこもり

2021年4月8日
◆深まる孤立へ共感と支援を◆

 小林市で、引きこもりに悩む家族らが集う「家族会」の発足に向けて準備が進められている。同市は地域共生社会づくりに向け市内の医療、福祉、介護など約70団体の多機関連携を進めてきており、2021年度は生活困窮者自立支援法に基づく就労準備支援事業として、引きこもり支援に本格的に取り組むことになった。11日、発足への初めての準備会が開かれる。

 事業を受託する同市社協によると、相談が最近目立って増えているという。地域福祉課の大学京子さんは「いよいよ経済的に立ちゆかなくなったと相談に見えるなど、ぎりぎりまで家族で頑張る人が多い。他の問題と比べて家族や当事者の拒否反応が強く支援につながりにくい」と話す。介護や困窮が相談の入り口でも、話を聞き進めると長年引きこもっている人が家族にいることが分かる場合もある。

 相談の増加は、新型コロナウイルス禍で窮乏が深刻化したこと、家族と過ごす時間が増えて家族関係が変化したことと無縁ではあるまい。全国的に交流が難しくなり、支援団体や相談体制が休止・縮小するなど影響もあった。当事者や家族の孤立感が増していないか気掛かりだ。

 県によると、相談窓口は少なくとも9市町にあり、行政や社協、親の会が設置。国が19年10月に相談窓口拡充の方針を示し、整備されてきたという。

 目の前に当事者がいない、SOSが出されていない、ニーズが見えないと言って、引きこもり問題は放置され家族の問題として片付けられがちだ。だが実際は、困窮や病気、障害、介護などさまざまな課題が複合的に絡む上、当事者の傷つき、つまづき体験には教育や就労環境の厳しさが大きく作用している。

 社会的問題であり、行政主導の支援が欠かせない。隠れたニーズの掘り起こしからきめ細やかな支援へつなげられるよう、県内全域で取り組みを活発化させなければならない。

 KHJ全国ひきこもり家族会連合会副代表の境泉洋・宮崎大教育学部教授は「引きこもりの人が親を介護したり家事をしたり、大切な役割を担っていることもある。しかし、そうした側面は評価されにくい」とした上で、「学校に行ったり仕事をしたりするのが当たり前で一人前、それができない人は劣っていると見なす空気が日本社会を覆っている。それに当事者は傷つきおびえ消耗する。失敗しても大丈夫という心の安全基地が重要で、社会全体の感性が問われている」と強調する。

 当事者や家族の立場だからこそ感じる苦悩を温かく包み込み見守る社会に変換できるか。孤立を深めないためのつながり方、支援態勢が求められる。

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