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SDGsと企業

2020年11月21日
◆多様な実践モデル活性化を◆

 国連が掲げる持続可能な開発目標「SDGs」の観点から注目される県内企業の取り組みがある。バングラデシュの優れたIT技術者を採用する「宮崎―バングラデシュモデル」だ。2017年から32人を受け入れた実績、教育から就労までつなげる仕組みに、国際協力機構(JICA)九州は「外国人材活用で大成功例」と太鼓判を押す。

 地方の中小企業が外国人を採用する際、壁になるのが言葉の問題という。そこで宮崎大が日本語教育をカリキュラム化して支援を開始。企業は奨学金を負担し、宮崎市が財政支援するという独自の仕組みが完成した。来日を希望するIT技術者は自国と同大学で各3カ月の研修を受け就労する道筋だ。

 IT立国を目指すバングラデシュでは人材育成に力を入れるが、給与面など安定的な就労の場が少ないという。かたや本県は若者流出と人材不足に悩む。「互いの弱点を補い合う点で一歩も二歩も先を行く支援の形。先進国が途上国に一方通行的に支援する従来の国際協力の姿を変えた」と同大学国際連携センターの河澄恭輔准教授は話す。

 加えて「SDGsの視点から雇用の場でも対等であることが重要」と指摘するのは、モデル構築をけん引した同センターの伊藤健一准教授。国籍が違っても働く人の権利が尊重されるのが本来の姿として、就労ビザを取得した上で、賃金や福利厚生などは日本人と同水準。安定した雇用環境の下で能力を発揮してもらいたいと制度設計した。

 4人を採用した同市のIT企業スカイコムR&Dセンター宮崎の飯澤恵美子センター長代理は「厳しい競争を勝ち抜いてきただけあって、彼らは技術が断然高く勉強熱心。良い刺激になっている」と笑顔。18年春に来県したマルジア・ハジェラさん(26)は将来、起業するのが夢で「会社組織や働き方など日本はレベルが高い。この経験が役に立つ」と確信している。

 地方都市の多くが人材不足にあえぐ今、このモデルは今後ますます地域社会を鼓舞し変革する力になるに違いない。学ぶべきは「人権を尊び、対等であること」。「誰一人として取り残さない」というSDGsの理念につながる精神でもある。

 県内でもSDGsをうたう企業は増えたが、それでもまだ低調という。JICA九州の上島篤志さんは「企業が社会貢献活動を明確化することで社員のモチベーション向上、社内活性化につながるのが最大のメリット。企業価値の高まり、環境や社会活動への取り組みが重視されるESG投資も期待できる」と話す。未来を思うSDGsの多様な実践が県内企業からさらに発信されることを望みたい。

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