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川辺川ダム容認

2020年11月20日
◆流域全体で合意形成図れ◆

 熊本県の蒲島郁夫知事は、今年7月に発生した深刻な豪雨災害を受け、県南部にある球磨川の支流、川辺川でのダム建設を19日、容認した。2008年に表明した「ダムによらない治水」からの転換と言える。住民の間では賛否が分かれており、球磨川流域全体での丁寧な合意形成を求めたい。

 県と流域の自治体は08年の表明以降、川幅の拡張、堤防の強化、水の流れを良くするための川底の掘削、遊水地の整備などの治水方法について検討してきた。抜本策が打ち出せない中で深刻な被害が発生したため、首長の意見がまとまりやすいダム建設に急いでかじを切ったようにも映る。

 ダム受け入れのよりどころとなったのが、国が10月に発表した7月豪雨の検証結果。ダムがあれば、被害が大きかった人吉地点の球磨川のピーク流量を約35%カットでき、この区間の浸水範囲を約6割低減できたとした。一方、「ダムの効果は大きいものの、ダムだけでは全ての被害を防ぐことはできない」とも明記している。

 地球温暖化に伴って今後、豪雨が増え水害の激甚化が想定されている。つまり、ダム建設によって水害の可能性が低くなるが、全てを防げるとは限らないということだ。

 県はあらゆる施策を実施することで被害を軽減する「流域治水」を打ち出し、ダムはその柱に位置付ける考え。万能の治水策がないことを肝に銘じ、幅広いハード対策、早期の避難を盛り込んだ被害軽減するための計画作成が重要となる。

 その際には、50年、100年先の温暖化の影響も予測し、浸水が想定される区域から街の中心を移していくことも考えるべきだ。高齢者ら避難に時間がかかる人が多く利用する施設や病院は、水害の恐れがある区域への立地を避け、今ある施設についても移転を急いでほしい。

 自治体は、こうした長期的な視点を織り込み、浸水しても被害を最小限に抑えられるようなまちづくりを進めるべきだ。

 川辺川ダムは農業の利水や水力発電の計画が途中でなくなったため、治水専用となる。常時水をためておく必要がないので、大雨になって川の水量が増えたときだけ水をためる流水型が採用される見通しだ。川辺川ダムはかなり大規模なものになるとみられる。事業主体である国は環境影響評価(アセスメント)を実施し、ダムの上下流の自然にどのような影響があるのか事前に明らかにすべきだ。

 地元では観光や漁業への影響を心配する声が強い。アセスの結果が見えた段階で、ダムが本当に必要なのか、流域全体で再度議論することも提案したい。

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