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コロナ禍の五輪

2020年11月19日
◆3密対策入念に準備せよ◆

 国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が来日し、菅義偉首相、小池百合子東京都知事らと会談。新型コロナウイルス感染拡大で延期された東京五輪・パラリンピックの安全な開催実現に向けて緊密に協力していくことで一致した。バッハ会長は選手や関係者へのワクチン接種を呼び掛けIOCが費用を負担する意向を表明した。

 菅首相は「観客の参加を想定し、さまざまな検討を進めている」と述べ、バッハ会長は「観客は妥当な数となり、五輪精神を感じる大会になる」と強調した。開催に懐疑的な日本の市民と、大会参加が実現するか心配する各国の選手に安心のメッセージを届けたいとの狙いから、事前に整えられたシナリオ通りの両者の発言だったことがうかがえる。

 8カ月余り先の五輪は、まだまだ不確定要素が多い。欧州も米国も、そして日本も感染が再び広がり、既に外出制限がかかった都市も少なくない。欧州のサッカー、北米の各種スポーツは無観客が標準となった。日本国内より海外のほうに、五輪に観客を入れることへの驚きの声が多いかもしれない。

 各組織には、無観客を避けたいそれぞれの理由がある。国内的には900億円のチケット販売収入を見込んでいる大会組織委が赤字に陥るのを防ぐためだろう。IOCにとっては、自身のスポンサー企業との約束を果たさなければ五輪ビジネスが揺らいでしまうとの危機感があるからに違いない。

 IOCスポンサーには五輪入場券を優先的に購入する権利が与えられており、彼らは開会式や陸上、体操など人気イベントに得意客を招待するのが商習慣として確立されている。実際、東京五輪の開会式はほぼ完売の状態という。組織委もIOCも、できることなら観客を多く入れたいというのが本音だ。

 開催に向けては、3密対策をどう進めるかが鍵になる。しかし、ボランティアの規模は史上最大だ。競技関連で8万人、駅や空港で案内に当たる都市ボランティアが3万人、計11万人とされる。ボランティアの規模縮小の検討が必要ではないか。

 選手を派遣する各国オリンピック委員会と、競技運営に携わる各国際競技連盟の関係者が選手と接触する機会を限りなくゼロに近づけるのは、極めて難しい。合計1万人を超える選手、コーチらが宿泊し、3密が避けられない選手村での対策は複雑なものになるに違いない。

 過去、誰も経験したことのない開催準備だ。来日する選手・関係者はもちろん、ホスト国である日本の安全を守るためにも、どこまでも入念で詳細な検討を進めてほしい。

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