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RCEP署名

2020年11月18日
◆自由貿易発展への役割担う◆

 日本、中国、韓国など15カ国が、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に署名した。保護主義の波が世界に広がる中で交渉が妥結にこぎ着けた意義は大きい。世界最大級の自由貿易圏が誕生するが、インドが加わらなかった上に、関税削減の水準やルールの内容には不満も残る。改善へ努力すべきだ。

 署名したのは、日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国、オーストラリア、ニュージーランドで、日本にとって貿易額1位の中国と3位の韓国が含まれる初の経済連携協定(EPA)だ。2013年の交渉開始から参加してきたインドは途中で離脱したが、協定にはインドが早期復帰できる特別措置を設けた。

 関税は参加国全体で91%の品目について段階的に撤廃する。日本の工業製品の最終的な関税撤廃率は91・5%で、輸出に追い風となる。ただ、関税削減の水準は新興国の事情に配慮した結果、環太平洋連携協定(TPP)の99・9%には及ばなかった。日本が輸入する農林水産品の関税撤廃率は49~61%で、コメや麦など農産物の重要5項目は対象外とした。

 投資ルールでは、中国が加入している協定としては初めて、政府が進出企業に技術移転を要求することを禁じた。電子商取引(EC)や知的財産保護について、比較的水準の高い国際ルールが中国との間で適用される。海外から問題視されてきた中国政府の政策に規制がかかるわけで、一定の評価をしたい。

 RCEPは、日本が進めてきた一連の自由貿易交渉の集大成と位置付けられる。日本はTPP、欧州連合(EU)とのEPA、日米貿易協定などとともに、自由貿易圏をほぼ世界全域に築くことになり、貿易額に占める自由貿易協定のカバー率は5割強から約8割に上昇する。工業製品の輸出を中心に、大きな貿易拡大効果が期待できる。

 しかし、今回の協定には課題も残された。最も大きいのはインドが参加を見送ったことだ。経済・軍事両面で覇権主義的な動きを強める中国の影響力をけん制するには、アジア太平洋地域で存在感を増しているインドの参加が欠かせなかったが、インドは対中貿易赤字拡大の懸念などから交渉を離脱した。引き続き、インドの早期加入へ働き掛けを続けていきたい。

 投資などのルールの内容も十分ではない。外国企業に対する技術移転の要求の禁止は一歩前進だが、中国の不公正な経済慣行は他にも指摘されており、国営企業への行き過ぎた補助金などは手付かずのままだ。課題はあるものの、日本は今後も自由貿易の発展に果たす役割を忘れてはならない。

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