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コロナ対策民間検証

2020年10月13日
◆「結果オーライ」では危うい◆

 政府の新型コロナウイルス対策について研究者、弁護士らの民間臨時調査会が、安倍晋三前首相らへの聞き取りに基づく検証報告書をまとめた。「場当たり的判断」の連続で、首相官邸と専門家が対立、政府内も足並みが乱れたと総括。それでも欧米より死亡率や経済への打撃を低く抑えられたのは「結果オーライ」(官邸スタッフ)にすぎないとの指摘は、深刻に受け止めるべきだ。

 安倍氏は、ロックダウン(都市封鎖)のような強制措置なしで感染拡大防止と経済活動を両立できたのを「日本モデル」と誇った。だが報告書は「失敗でないにしても安易に成功と評することも適切でない」とした。日本モデルの「成果」を巡り、対策との因果関係が不明なまま「結果オーライ」と総括するのは次の危機管理を危うくするとの見解は的確だ。

 安倍氏の「今までの知見がない中、最善を尽くした」との自己評価にも疑問符が付いた。報告書は「2012年制定の新型インフルエンザ特別措置法は短期の自粛要請しか想定していなかった」と指摘。長期化の場合の経済的補償を検討せず、保健所などの予算・人員は年々削減、PCR検査能力も1日300件程度しか保持していなかったことを挙げ、政府の「備えの欠如」を批判した。

 そして報告書は数々の問題事例を示す。2月末、「ウイルスとの闘いは瀬戸際」との専門家見解を重く見た安倍氏は急きょ全国一斉の休校要請を決断。専門家にも諮らなかった。このスタンドプレーの思わぬ悪影響も報告書は明らかにする。

 3月中旬、感染拡大の一因だった欧州への渡航の中止を専門家が要請したが、休校要請に反発する世論への対応で政府は「消耗」して中止措置が取れず、官邸スタッフは「あれが一番悔やまれる」と振り返った。危機管理は一つ歯車が狂うと連鎖反応を呼ぶ。安倍氏は自らの判断の結果を改めて見つめ直すべきだ。

 4月上旬の緊急事態宣言発令の前、小池百合子東京都知事が都市封鎖の可能性に言及し、国民の不安が高まったため「宣言が遅れた」(西村康稔経済再生担当相)とも報告された。だが当時の政府では菅義偉官房長官をはじめ経済への配慮から発令に慎重論が強かったことも指摘しており、都知事発言にかかわらず政府自体が発令をためらった側面も否定できない。

 報告書は、今回の教訓は10年前の新型インフルエンザ対策総括報告書に網羅されているとし、「国を挙げてのど元を過ぎると熱さを忘れてしまった」と断じた。政府は今度こそ学ぶ責任がある。

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