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GoToトラベル

2020年9月29日
◆コロナ再拡大への懸念残る◆

 政府は観光支援事業「Go To トラベル」に10月1日から東京都を追加する方針だ。地方への新型コロナウイルス感染拡大を懸念する声が専門家から上がったが、割引を適用した東京発着旅行の予約が既に始まっており、東京追加は既定路線になっている。

 流行の第2波は7月末から8月初旬がピークだった。感染が再拡大していた東京を除外して7月下旬に始まった同事業が影響した可能性は高い。人口約1400万人の東京を追加するなら、政府は経緯を検証し、国民にリスクと効果を説明してから踏み切るべきだ。

 東京追加の方針は9月の新型コロナウイルス感染症対策分科会で西村康稔経済再生担当相が表明した。しかし尾身茂会長ら専門家が、東京の感染者について「下方向に行っているが、常に再燃の可能性がある」と指摘。拙速に東京を追加して感染が広がれば「国民の信頼を失う」として9月末の感染状況を見極めるようくぎを刺した。

 それでも西村氏は「基本的に了解いただいた」として、10月からの日程ありきで観光支援に前のめりな姿勢を鮮明にした。専門家が知見に基づき制止しても立ち止まれないようなら専門家会合を設けた意味がなくなる。さらに政府は東京発着旅行の予約を解禁した。

 第2波はウイルス遺伝子の分析により、緊急事態宣言の解除後、東京から人が移動し、大阪、福岡、沖縄など各地に感染が広がっていったと判明している。官公庁は宿泊施設に対し、客の検温、浴場など共用部の人数制限などを義務化し感染防止策を徹底させるが、それでも地方には不安が根強い。

 東京都医師会の尾崎治夫会長も「まだ油断できない。東京から感染者が少ない地域にどんどん行くのはリスクが高い」と慎重な判断を求めている。

 それでも政府は、延べ1300万人超がGo To トラベルを利用した一方、利用者の感染は10人超にとどまるとしている。旗振り役だった菅義偉首相も推進姿勢に揺るぎがない。だが、割引を受けずに感染者が対象施設に宿泊していたケースも多く、過剰に成果、安全性を強調していないか。

 欧州ではフランス、スペインなどで感染が再拡大し、英国はレストランなどの営業を午後10時までに制限した。いずれも、いったん行動制限を緩め人の移動が増えたことが再燃の背景にある。東京を追加するなら、それが原因で感染拡大した場合への備えが何より重要だ。どういう状況になれば中断するか、一部地域を外す柔軟対応はできるかなどを事前に想定しておくべきだろう。

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