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派遣法改正5年

2020年9月12日
◆待遇改善へ本腰入れよ◆

 新型コロナウイルスの感染拡大による影響で解雇や雇い止めに遭った人が8月末時点で、見込みも含め全国で5万人を超えた。14都道府県で千人以上となり、本県は481人。厚生労働省が各地の労働局やハローワークに相談した事業所の報告を基に集計した。実際はもっと多いとみられる。

 政府は支給額や対象を拡充した雇用調整助成金を活用して雇用を維持するよう企業に求めているが、パートやアルバイト、派遣労働者ら非正規を取り巻く状況は厳しい。とりわけ、四半期契約で働く派遣の多くは今月に契約更新時期を迎え、「派遣切り」に不安を募らせている。

 2015年9月、改正労働者派遣法が成立、施行された。景気が悪くなれば真っ先に切り捨てられていた派遣労働者の雇用安定を目的としていた。しかし5年たった現在でも、相変わらず「雇用の調整弁」として使われていることが改めて浮き彫りになった。総務省の労働力調査によると、派遣の就業者数は前年同月比で緊急事態宣言が出された4月に4万人減、7月には16万人減だった。

 法施行以前は、一般業務は最長3年、秘書や通訳などの専門業務は制限なしと派遣期間は業務により異なっていた。改正で派遣期間を原則3年に統一し、企業が労働組合の意見を聞いた上で3年ごとに人を入れ替えれば、同じ仕事を派遣労働者に任せ続けることが可能になった。

 一方で、派遣会社には同じ職場で3年を迎えた人を対象として、派遣先企業に直接雇用を申し入れる▽別の派遣先を紹介する▽派遣会社が無期雇用する―といった雇用安定措置が義務付けられた。また、キャリアアップのための計画的な教育訓練を実施する義務も加わった。

 政府は「正社員を望む人にはその道を開き、派遣を選ぶ人には待遇を改善する」と改正の意義を強調。ところが、連合がまとめた派遣千人のアンケート結果によると、派遣期間3年以上の人の64・1%が「いずれの雇用安定措置も講じられていない」と回答。教育訓練については、全体の33・0%が「していない」、42・3%が「分からない」と答えた。

 結局、得をしたのは企業だけということだ。派遣期間の制限が事実上なくなり、派遣の使い勝手が格段に良くなった。現行制度は派遣の権利をいかに守るかという視点に欠けていると言わざるを得ない。

 派遣には自由な働き方を望む人もいるが、バブル崩壊後の就職氷河期世代など、さまざまな事情で不本意な働き方をしている人も多い。感染収束が見通せない中、待遇改善に向けて本腰を入れなければならない。

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