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五輪コロナ対策

2020年9月11日
◆選手の安全守る世界基準を◆

 東京五輪の準備状況を監督する国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ調整委員長が、新型コロナウイルスの影響で来年に延期された東京五輪について、ウイルスが「あろうがなかろうが」開催されるとして再延期や中止はないとの見方を示した。

 春以降、世界の主要なスポーツ大会が中断に追い込まれ、五輪は中止もやむを得ないとの受け止め方が広がったが、夏になりプロスポーツが稼働し始め、見通しが変化してきた。

 東京五輪・パラリンピックに向けて新型コロナの感染対策を整備するための初会合が開かれた。政府が主導し東京都、大会組織委員会と連携したもので、どのような形態であれ開催への道筋をつける、との決意表明とみることもできそうだ。

 観客を一定数に制限するか、もしくは無観客とするなら、なんとか開催できるのではないかと考える関係者は多くなっている。対策会議はIOCの現状分析と意見を聞きながら、今後の世界的なスポーツの進展状況を見て進められるという。スポーツ大会でのコロナ対策の世界基準は今後、より確実で精巧なものになっていくはずだ。

 IOCはたとえ無観客となっても五輪を開催したいに違いない。夏季五輪の世界的な関心の高さは、IOCにとって最も大切な財産だ。放送権収入とスポンサー収入を各国のオリンピック委員会、五輪競技の国際連盟、さらに夏季、冬季の五輪開催都市の大会組織委員会に分配することで、IOCは五輪運動の歯車を回している。東京五輪が万が一中止になれば、IOC自身がこれまで経験したことのない財政的な危機に直面する恐れもある。

 日本に求められるのは、とにかく3密をつくり出さないとの基本的な考え方に立って、五輪開催に関わるあらゆる場所で具体的で効果のある方策を講じることに尽きるのだろう。

 注意しなければならないのは、1年延期となったことで大会開催費用が約3千億円膨らむ見通しの中、検討が進むコスト削減対策がこのコロナ対策と矛盾しないようにすることだ。

 例えば、各国選手団の役員をはじめとする関係者に大会組織委が提供する車両を減らし、タクシーや公共交通機関の利用を求めることが検討されているが、これでは感染対策の安全網に穴があいてしまうことにつながりかねないか。

 経費圧縮のため大会の簡素化が重要なのは間違いない。しかし、選手と競技の安全を確保するための競技環境を守り抜くことがそれ以上に必要だ。具体案を発信し、世界の隅々に安心のメッセージを届けてほしい。

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