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椎葉土砂崩れ

2020年9月10日
◆山間部の災害リスク対策を◆

 台風10号の大雨による土砂崩れが椎葉村下福良で発生し、行方不明となっている男女4人の捜索が続いている。9日は270人規模に捜索態勢を拡大したが、現場が狭く重機や人員を大量に動員できない上、土砂が大量で捜索は難航している。9日夜には、生存率が著しく下がるとされる「発生後72時間」を迎えた。奇跡の救出への祈りが届くことを願いたい。

 土砂崩れは6日午後8時~8時半ごろ発生、地元建設会社の事務所と社長の自宅をのみ込んだ。現場入りした本紙記者によると、建物は跡形もなく流され、ガードレールや家屋の破片が川幅30~40メートルの十根川を挟んだ対岸まで飛散。そのすさまじい破壊力に圧倒されたという。

 同村では2005年の台風14号の際にも土砂崩れが発生。3人が犠牲になった。急(  きゅう)峻な(しゅん  )山地に囲まれた地元では「いつまた土砂崩れが起きてもおかしくない」と危機感を募らせていた。近年、地球温暖化の影響で頻発する局地的豪雨も、住民が懸念を強める背景にあっただろう。

 県内の林務関係者は「被災地の写真を見る限り、周辺の山はしっかりと人の手が入り、植林から40~50年ほどたっていて地盤支持力も保持された山だと思う。にもかかわらず土砂崩れが起きるということは、スポンジが一定量を超えると吸水しなくなるように、山林が持つ保水力の許容量を超えた雨量によるものだろう」と話す。

 十分な治山・森林整備事業を講じても防ぎようのない被害が、今後も起きる可能性は十分ある。荒れた山が放置されているなら危険度は一層高くなる。山をどう守るか、林業をどう維持していくか。山間部の災害リスクを減らす観点からも、山の公益的機能にもっと人々が関心を寄せ、山保全の取り組みを活性化させることが重要だ。

 本県は県土の7割以上を森林が占める。林業県の本県では概して、森林経営計画に基づいた森林整備事業が積極的に展開されてきたと言っていい。山の荒廃を食い止めるための新制度「森林経営管理制度」も導入された。しかし、高齢化などで所有者不明の民有林が増え山の手入れに苦慮する実態もある。

 今回の土砂崩れでは、同村に今春から来ていたベトナム人の技能実習生2人も被害に遭った。社長自ら人材確保に動き、2人は地域に溶け込む努力をしながら重労働の建設業で懸命に働いていたという。

 高齢化と過疎化が加速する山村で、若者流出と人手不足に悩む産業の姿も浮き彫りにした。災害に強い山村づくり、森林保全とともに、山間部の課題の一端を県民に投げ掛けた。ともに考えていくべき問題だ。

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