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人口減少対策

2020年6月25日
◆自治体の連携を模索せよ◆

 人口減少が深刻化し、高齢者の数がピークを迎える2040年ごろ、地方自治体は行政サービスをどう維持するのか―。この大きな課題について、首相の諮問機関である地方制度調査会(地制調)が答申をまとめ、自治体の広域連携やデジタル化の推進を打ち出した。これだけで20年後の地域社会を守れるとはとうてい言えない。

 6月定例県議会の一般質問では、地域衰退への危機感があらわになった。新型コロナウイルスの影響で住民の不安が膨張しただけになおさらだ。雇用維持、企業誘致、医療体制整備、著しく利用者が減った路線バスを含む地域交通など、多岐にわたる課題が提示された。地道にこれらに向き合い解消していくことが求められている。

 感染拡大で東京一極集中のリスクが顕在化し、リモートワークが普及したことによって、企業の地方分散、地方移住がもっと関心を集めるに違いない。教育、医療、交通、福祉などの公共サービスに加え、住民による相互扶助など暮らしやすい地域づくりに奔走するのはもちろん、行財政の効率化を進めることが前提になる。

 答申に盛り込まれた市町村の広域連携と地方行政のデジタル化が欠かせない。一つの自治体がこのまま行政サービスを自前で維持するのは難しく、都道府県による補完・支援、周辺市町村との助け合いは必須だ。

 ただし、国主導の広域連携には苦い経験がある。平成の大合併である。本県でも44市町村から26市町村になり、行政の効率化が進み、地方財政は強化された。一方で、役場や支所が失われた地域では公共サービスの衰退が加速する結果となった。

 地制調では、総務省の有識者研究会が提言した「圏域」構想を採用するかどうかが最大のテーマだった。複数市町村で構成する圏域を行政主体として法律で位置付け、連携して行政サービスを担う態勢を整えるという構想だが、「中心都市に機能が集約され周辺部が衰退する」など反対意見が浮上。大合併のトラウマが背景にあった。

 もはや人口減少にあらがえないが、それでも愛着のある地域をどう維持するか。新しい多様な広域連携の具体像を描かなくてはならない。国主導の画一的な手法からいったん距離を置き、地域の声を吸い上げることから始まるだろう。

 デジタル化に関して現状では、国も自治体もIT大国と呼ぶには程遠い状況である。システムの統一を進めて、行政手続きのオンライン化も進んだ社会への転換を急がなければならない。新たな分散型の国土像を議論し、実現する方策を早急にまとめるべきである。

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