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国文祭・芸文祭延期決定

2020年6月24日
◆知恵絞り規模縮小最小限に◆

 今秋に本県で開催予定だった第35回国民文化祭(国文祭)と第20回全国障害者芸術・文化祭(芸文祭)が新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、来年7~10月に開催されることが決まった。1986(昭和61)年に始まった国文祭の延期は初めて。本県の豊かな文化資源を発掘し、老若男女が芸術文化に触れる貴重な機会である。準備を重ねる関係者らは、成果を披露する場が再設定されたことにまずは安堵(あんど)の思いだろう。

 延期を巡って、県は「準備が思うように進んでいない」「感染の収束が見えず不安」といった参加団体などからの声を受け、延期の方向で複数の選択肢を検討。「何としても開催したい」と県の強い意向を国に伝え、協議を重ねてきた。

 その結果、来年は本県に続いて間もなく、10~11月に和歌山県で開催。1年に2度の国文祭・芸文祭という異例の形となる。東京五輪・パラリンピックの会期と一部重なり、河野知事は23日の記者会見で、「五輪はスポーツのみならず、文化の祭典でもある。このタイミングを前向きに捉え、本県の魅力や文化を発信したい」と話した。

 依然としてコロナ感染の動向は測りにくい。プロ野球などスポーツ界が導入する無観客形式など、安全性を優先したこれまでにない運営方法を模索する必要があるかもしれない。その場合、芸術文化が成立するのかという問題も浮上する。いずれにせよ、新たな生活様式に沿った安全な運営と、共感と感動の輪を広げる大会趣旨をいかに共存させるかという観点からも、検討が求められるだろう。

 ただ、今回の延期決定に伴い残念なのは規模縮小の可能性が高いことだ。2017年から一体開催となった両祭には例年100万人規模が参加し、今年は約150事業を行う予定だった。しかし、全国持ち回りのプログラムが和歌山県に持ち越されるほか、コロナ対策に多大な予算を費やした県内市町村の財力などの都合があるという。

 長引く外出自粛で停滞した人々の生活と地域経済に向けて「潤いや安らぎを与え、未来に向けた芸術の力を発信したい」(河野知事)というなら、県は調整・推進役として一層汗をかいてほしい。規模縮小を最小限にとどめるため、市町村の予算確保、モチベーションの維持、機運の醸成など、来年7月を目標にやるべきことは多い。

 これまでの経緯から「県の唐突な発表」(関係者)のために不安が広がったのも事実だ。早めの判断と密な情報発信が、大会の裾野を支える人たちの安心と信頼を獲得し、実りある大会につながることも付しておきたい。

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