ホーム 社説

中国の香港統制

2020年5月30日
◆強権的な手法自制すべきだ◆

 中国の第13期全国人民代表大会(全人代=国会)第3回会議は香港への治安維持対策を強化する国家安全法制の導入を決定し、閉幕した。香港立法会(議会)では、中国国歌の侮辱を禁じる国歌条例案の審議が約1年ぶりに再開し、市民が抗議デモを行った。

 香港では昨年、中国への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に反対する大規模なデモが起きた。これを受けて中国は統制を強める構えだが、「一国二制度」は存続の危機に直面することになり、香港市民の激しい反発は必至だ。

 中国が一方的に「愛国」を強制しても逆効果だろう。本土離れを防ぐには、香港の「高度の自治」を認め、中国自身も民主化を進めて「愛される魅力的な国」に変わる以外に道はない。中国は強権的な手法を自制するべきだ。

 全人代の草案説明によると、国家安全法制には「国家安全を害する行為を防止、処罰する」として香港の反中国デモなどを厳しく取り締まり、中国政府は必要に応じて香港に「国家安全維持の関係機関」を設置することなどを明記する。

 李克強首相は「一国二制度を長く続け、香港の繁栄と安定を守るためだ」と説明。王毅外相は昨年来の情勢について「香港独立組織と過激分離勢力がのさばり、外部勢力が深く不法介入するようになった」と欧米の「内政干渉」をけん制した。

 だが、昨年11月の区議会(地方議会)選挙では民主派が8割以上の議席を獲得して圧勝した。中国は一部の過激派学生だけでなく、多数の一般市民が「中国化」を拒絶しているという現実から目をそらせてはならない。

 香港基本法(憲法に相当)23条は国家分裂行為などを禁じる国家安全条例を香港が自ら制定するよう規定。香港は2003年に制定を目指したが、大規模な反対デモが起きて廃案となった。条例制定の見通しが立たないため、全人代常務委員会が関連法を制定し、香港政府が公布、施行することになった。

 香港の警官隊は27日、国歌条例案の審議再開に抗議してデモを行った市民千人を強制排除し、違法集会参加の疑いで多数を逮捕した。市民の間には当局の暴力的なデモ取り締まりや国家安全法制への反発が根強い。6月上旬には、民主化運動を武力弾圧した天安門事件31年や香港100万人デモ1年の節目も迎え、抗議行動は強まろう。

 日米欧など自由と民主主義の価値観を共有する国々は、中国が香港の「一国二制度」を真摯(しんし)に堅持し、国内の民主化にかじを切るよう粘り強く働き掛けていきたい。

このほかの記事

過去の記事(月別)