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困窮学生へ現金給付

2020年5月21日
◆根本的な若者支援検討せよ◆

 政府は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で困窮する学生への現金給付を閣議決定した。前進ではあるが、対象は約43万人と一部に限られ、「全学生の10人に1人にすぎない」とする学生支援団体もある。一時的な対症療法に終わらず、学費軽減を含めた根本的な学生支援について本腰を入れるときだ。

 県内の国公私立4年制大学によると20日時点で、コロナ禍に伴う困窮に関する学生からの相談はゼロ~数件程度にとどまる。オンライン授業で登校機会が乏しいことや、他の奨学金での補填(ほてん)が考えられるという。

 ただ、「授業料の支払い猶予や分割についての相談、申請が例年より増えている」(県立看護大)、「生活が苦しいという相談が1件あった。アルバイト先の休業など影響は深刻だと思うので、教官らと連携し広く相談に乗りたい」(宮崎産業経営大)など、変化を感じ取っている大学もある。

 「現時点で表出していないだけで、今後影響が長引けば相談が増えるかもしれない」と話すのは九州保健福祉大。同大学は独自の支援策として授業料減免のほか、実習や事務作業の補助など学内での学生アルバイトの拡充策を検討している。

 経済活動が急速に縮小した痛撃の影響は計り知れない。学生からの相談がないから大丈夫と安心するのは早計だ。大学関係者らは引き続き、学生の学業と生活に注意を払い、多様なサポート態勢を構築してほしい。

 学生アルバイトは今や、娯楽のための小遣い稼ぎというより、生活費を賄う上で大きな役割を占めるようになった。特に本県出身で都市圏に進学した学生は仕送りだけでは足りず、アルバイトで埋め合わせている人は多い。全国大学生協連の調査では仕送り額が減少する一方、アルバイトの月収額が過去最高を更新したと報告されている。

 もともと県民所得が全国平均と比べて低く、ひとり親世帯が多い本県だ。ぎりぎりの経済状況の中、奨学金や教育ローンなどで工面して学業を支えている家庭は少なくないだろう。

 家計所得が伸び悩む中で、大学の授業料は上がり続ける。教育への公的支出は先進国で最低水準という構造も変わらない。学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」が「(コロナ禍の)被害を受けているのは全ての学生」として、一律で学費を半額にする支援策を求めているのも十分納得できる。

 大学進学など高等教育の負担を家計に依存するのはもはや限界にきている。就学を親、学生頼みで継続させる現状を変えることは未来世代を育てるために不可欠だ。これもコロナ禍が提示した切実な課題である。

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