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「森友」自殺職員手記

2020年3月25日
◆政府主導で調査再開せよ◆

 学校法人「森友学園」問題を巡る決裁文書の改ざんを強いられて自殺した財務省近畿財務局の男性職員の妻が、残された手記や遺書を公表するとともに国などに計約1億1千万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴、野党が追及を強めている。

 安倍晋三首相は23日の参院予算委員会で「麻生太郎副総理兼財務相の下、事実を徹底的に調査し明らかにした。捜査当局による捜査も行われた」と述べ、改めて再調査に乗り出すことを拒否した。

 しかし、手記や訴状には森友学園への国有地格安売却問題を担当していた職員が、佐川宣寿元国税庁長官の指示で改ざんするよう強制され精神的に追い詰められていく様子が詳細に記され、改ざんのきっかけは安倍首相の国会答弁だったともされている。佐川氏の関わり方など2018年6月に公表された財務省の報告書と食い違う点もある。政府は調査し直し、真相を明らかにすべきだ。

 職員は、近畿財務局の上席国有財産管理官だった赤木俊夫さんで、54歳だった18年3月に自殺した。妻は18日、「決裁文書の差し替えは事実で、元はすべて佐川氏の指示です。パワハラで有名な佐川氏の指示には誰も背けない」などと記された職員が残した手記などを公表した。

 手記や訴状によると、当時、財務省理財局長だった佐川氏は、報道をきっかけに国会で追及された安倍首相が「私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」と答弁した直後の17年2~3月、財務省幹部に改ざんを指示した。

 その内容は「野党に資料を示した際、森友学園を厚遇したと取られる疑いがある箇所は全て修正するように」という具体的なもので、財務省幹部は近畿財務局に改ざんを命じた。

 赤木さんは当初、上司に抵抗したが、結局3、4回にわたり決裁文書から安倍昭恵首相夫人や政治家らの関与を示す部分の削除を強制されたとしている。長時間労働や連続勤務で心理的負荷が蓄積し、うつ病を発症して休職した。

 告発を受けて捜査を始めた大阪地検特捜部の事情聴取を受けるなどした赤木さんの病状は急速に悪化、「検察は近畿財務局が主導で行ったという絵を描いている。最終的には自分のせいにされる」と話すようになったなど、自ら命を絶つまでの経緯が詳述されている。

 赤木さんの、文字通り命がけの告発を黙殺することは許されない。「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」。手書きの遺書には政権の対応を見越したかのような記述がある。調査を再開することから始めなければ不信はぬぐえない。

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