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心愛さん虐待死判決

2020年3月20日
◆役所の不手際繰り返すな◆

 千葉県野田市立小4年の栗原心愛(みあ)さんに虐待を繰り返し、死亡させたとして傷害致死などの罪に問われた父勇一郎被告の裁判員裁判で、千葉地裁は懲役16年の判決を言い渡した。

 被告は「罪は争わない」とする一方、母の証言を次々と否定し、食事を与えなかったり、一晩中立たせたりしていないと訴えた。裁判員から普段のしかり方を聞かれ、たたくなどの暴行は一度もなかったと述べたが、判決は被告の言い分を「信用できない」とした上で「尋常では考えられないほど陰湿で凄惨(せいさん)な虐待」と非難。以前の児童虐待事件と比べ重い量刑とした。

 この事件では児童相談所や市、学校などの対応ミスが重なり、救えたはずの命を救えなかったと批判が噴出。政府は児相の体制強化や親の体罰を禁止する立法などの対策を講じたが、その後も役所の不手際が目立つ。現場のほころびを絶えずチェックし、子どもの安全確保をより徹底させる必要がある。

 児童虐待は深刻さを増している。全国の警察は昨年1年間に虐待事件で保護者ら2024人を摘発。被害に遭った18歳未満の子どもは過去最多の1991人に上った。心愛さんも含め54人が命を落とした。虐待の疑いがあるとして児相に通告したのは9万8222人。緊急性が高い場合などの保護は5553人で、2012年と比べて3・4倍となり、初めて5千人を超えた。

 被害の8割以上を身体的虐待が占め、亡くなった54人は無理心中などを除いて、傷害致死が11人、殺人と保護責任者遺棄致死はそれぞれ6人、重過失致死2人だった。

 心愛さんの両親逮捕後の昨年2月、児童虐待防止に向けた関係閣僚会議で安倍晋三首相は「子どもの命を守ることを最優先に、虐待根絶に取り組んでほしい」と述べ、1カ月以内に全ての虐待事案の緊急安全確認を行うと表明。政府は保護者が児相など関係機関を避ける場合はリスクが高いと認識し、ためらわず一時保護するよう求めた。

 しかし2カ月後、札幌市の児相は虐待通告を受けたのに安全確認を怠った。警察から母子との面会に同行を要請されても夜間態勢がないことを理由に断り、昨年6月に2歳女児が両親による虐待の末に衰弱死するという最悪の結果を招いた。

 さらに昨年夏に愛媛県の職員が安全確認のため訪問した先で通告者の情報が記されたメモを相手に見られたり、今年2月には神戸市で真夜中に1人で児相を訪ねた小6女児が追い返されたりといった不始末も起きた。子どもが発するSOSに一般市民も含め周囲がきちんと対応しなければならない。これ以上の悲劇はもうたくさんだ。

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