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新型肺炎と中国

2020年3月7日
◆批判受け止め対策尽くせ◆

 重い肺炎を引き起こす新型コロナウイルスは中国から日本や韓国、イタリアなど世界中に広がり、人々の命と健康、平穏な社会・経済活動を脅かしている。世界を揺るがす感染症の震源地、中国の国際社会に対する責任は極めて大きい。

 中国のインターネットなどでは、政府の初動の遅れや情報隠(いん)蔽(ぺい)、不十分な医療体制への不満が根強い。自由な議論や情報交換を認めない共産党一党支配下の非民主的な政治体制や官僚主義への批判も出ている。

 中国政府は批判を謙虚に受け止め、国内での感染封じ込めに全力を挙げてほしい。また、世界保健機関(WHO)や感染国・地域と協力し、国外への拡大抑制や情報公開に努め、国際責任を十分に果たすべきだ。

 昨年末、湖北省武漢市で肺炎患者27人の感染が初めて公表されて2カ月余り。患者は急速に世界に広がった。習近平国家主席は1月20日、新型肺炎を「全力で予防し、制圧せよ」と重要指示を出した。初公表からの「空白の20日間」が初動の遅れをはっきりと示している。

 2月に新型肺炎で死亡した武漢市の若い医師は昨年末、感染症の発生に注意を呼び掛けたが、デマを流したとして警察当局に摘発され、訓戒処分を受けた。ネット上で、この理不尽な取り締まりに対して反発が噴き出した。

 中国政府の専門家グループのトップ鍾南山氏は記者会見で、感染症対策部門の地位が低く、新型肺炎の公表が遅れたことを認めた。中国では「共産党政権と社会の安定」を最優先し、情報が隠蔽されることが少なくない。民主化に向けた政治体制改革は不可欠だ。

 毎年3月5日から開く全国人民代表大会(全人代)会議=通常国会=は感染症対策のために延期された。重要な政治日程を先送りしても、対策に尽力するのは当然だ。

 中国の専門家は新型ウイルスの感染源が野生動物だった可能性が高いとみており、全人代常務委員会は野生動物を食べる習慣の根絶や全面的な取引禁止を決めた。

 昨年の中国の国内総生産(GDP)は、前年比6・1%増と29年ぶりの低水準だった。今年も長引く米中貿易摩擦に加え、新型肺炎の流行による生産や消費の落ち込みで経済成長が大きく減速するのは確実だ。全人代会議では成長目標が公表されるが、今年はかなり引き下げざるを得ないだろう。

 4月で調整してきた習氏の国賓来日も先送りされた。日中共に肺炎対策が喫緊の課題であり、やむを得まい。日中協力して新型肺炎を封じ込め、信頼関係を深めたい。

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