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米大統領選スタート

2020年2月8日
◆混迷の出口見いだす議論を◆

 4年に1度の米大統領選が3日のアイオワ州党員集会で幕を開けた。11月3日の本番まで9カ月にわたる戦いでは、ポピュリズム(大衆迎合)型の分断統治、格差拡大が象徴する資本主義の在り方、自国第一主義など、世界に共通する課題が争点になるはずだ。混迷の出口を見いだす選挙戦を期待したい。

 トランプ氏は3年前の大統領就任以来、米国と世界を混乱させてきた。内政では白人至上主義的な言動や対メキシコ国境の壁建設を代表とするポピュリズム型の政治を進めた。2016年の当選直後「全ての米国人のための大統領になる」と勝利宣言したが、再選のために岩盤支持層と呼ばれる保守的な白人が喜ぶ政策遂行に終始している。

 経済政策では減税の効果で株価は上昇したものの、格差は広がる一方だ。民主党ではサンダース、ウォーレン両上院議員が、格差是正のために、これまで米国では忌避されてきた社会主義的な政策を唱え、格差の犠牲者であると訴える若者の熱烈な支持を集めている。

 対外政策ではグローバリズムに背を向け、高関税政策で世界経済を揺さぶり、地球温暖化対策のパリ協定、イラン核合意、そして中距離核戦力(INF)廃棄条約から一方的に離脱した。中東和平での異様にイスラエル寄りの姿勢は、思慮の上の超大国外交とは言えない。

 米史上3人目の弾劾裁判となったウクライナ疑惑が明らかにした政敵攻撃の衝動やかつての側近に対する口汚い非難は、米政治の質を落としてしまった。問題はこうした米国の政治傾向が世界に広まり、トランプ型の政治家、政治手法が流行のようになってしまったことだ。

 英国の欧州連合(EU)離脱に見る混乱とジョンソン首相の統治スタイルはトランプ氏に似ている。ポピュリズム統治は、インド、トルコ、ブラジル、ハンガリー、ポーランド、フィリピンなどの民主主義国家に広がり、世界的な民主化の後退を印象付けている。

 国家の分断、格差、外国に対する敵意が深まる世界で、民主主義や資本主義、グローバル化の将来は楽観できない。本来米国の大統領はこうした困難な課題について国民的な議論を引っ張る指導力を発揮すべきなのだが、トランプ氏は国民の怒りにつけ込んで自らの票田とするだけで、解決策を示さない。

 民主党の候補者は、中道から左派まで幅広い主張を繰り広げている。アイオワに続いて各州で予備選が本格化し、夏の党大会で党の指名候補が決まる。共和党も良識ある保守派が声を上げ、トランプ政治をさらに4年間続けるのか、誠実に考える機会とするよう期待する。

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