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春闘スタート

2020年2月6日
◆最大限の賃上げ努力必要だ◆

 連合の神津里季生会長と経団連の中西宏明会長が会談し、2020年春闘が事実上始まった。注目されるのは、経団連が日本型雇用の見直しに言及したことだ。しかし、今の日本経済にとって重要なのはまず、着実な賃上げの継続である。

 連合は基本給を底上げするベースアップ(ベア)の水準を「2%程度」とし、定期昇給分2%を加えた4%の賃上げを要求する。各企業内の最低賃金の水準として時給1100円以上と具体額を初めて掲げ、格差是正も柱としている。

 経団連は「経営労働政策特別委員会(経労委)報告」で、ベアは容認しながらも、春闘のような業種横並びの賃金交渉は実態に合わなくなっていると疑義を示した。その上で、終身雇用や年功型賃金など日本型雇用システムの見直しが必要になっていると明記した。

 経団連が日本型雇用慣行を春闘の場に持ちだした背景にあるのは、人工知能(AI)をはじめ経済のデジタル化、国際化の進展など急激な環境変化だ。従来の仕組みでは有能な人材の獲得が難しくなるという危機感は、よく分かる。

 しかし、そうした雇用慣行の改革が、賃上げの抑制や労働者の処遇を切り下げる口実として使われるようなことがあってはならない。経団連が目指す雇用の流動化や賃金体系の見直しは企業が人員整理をしやすく、賃金格差の大きい労働環境の整備につながる可能性がある。性急に事を進めるべきではない。

 安倍晋三首相はデフレ脱却のために、14年春闘以降、7年連続で交渉の前に賃上げを要請してきたが、十分な賃上げから個人消費の拡大に至る好循環は実現していない。今春闘で経営側にまず求められるのは、最大限の賃上げ努力だ。

 4月からは非正規と正社員の不合理な待遇格差をなくす「同一労働同一賃金」や、中小企業への時間外労働の上限規制も始まる。経営側には、賃上げだけではなく、労働環境改善の真剣な取り組みが必要になる。日本型雇用慣行の見直しは、その先の課題である。

 今年の日本経済は、昨年10月の消費税率10%への引き上げや米中貿易摩擦に、中国の新型肺炎も加わり、景気後退の懸念が強まっている。企業業績も減速しているが、企業の内部留保は過去最高に達しており、まだ賃上げの余力は十分にあるはずだ。人への投資は人材の確保と労働生産性の向上に資し、企業の収益拡大にもつながる。

 経営側のトップは、何かというと「身を切る構造改革」を国民に求めるが、自分たちに身を切る覚悟はあるだろうか。率先して手本を示せと言いたい。

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