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新型肺炎

2020年1月24日
◆国内の感染拡大阻止急げ◆

 中国・武漢市から始まった新型コロナウイルス感染が急拡大し、発症者は600人を超えた。死亡者も17人に上っている。医療従事者の感染も増加。日本など中国以外での発症・感染者確認も相次いでいる。

 当初は、患者と生活を共にするなどの「濃厚接触」がなければ人から人に感染しないとみられていたが、中国政府の専門家が人から人への感染を認め、さらに21日、世界保健機関(WHO)が「持続的な人から人への感染があるとみられる」と発表するに至り、緊張が高まった。

 日本政府は今後の対応として、検疫所での水際対策や医療機関での患者把握の徹底、国際的な連携と情報収集、国民への迅速で的確な情報提供を行う方針を決めた。いずれの対応も着実に進めてほしいが、中でも重要なのは的確な情報提供だ。

 新型ウイルスは、2003年ごろにアジアで流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)や、今も発生が続いている中東呼吸器症候群(MERS)と同じコロナウイルスの仲間。SARSやMERSでは重症肺炎により多くの死者が出たため、同様の事態を懸念する声がある。

 現時点ではSARSなどに比べ感染力は低く、重症化もしにくいとの見方が強いが、コロナウイルスは変異を起こしやすく、感染力が強まる可能性もある。ただ、過度に心配しても何の得にもならない。情報不足はいたずらに不安を増幅する。国民が冷静に行動するために、政府や関係機関には科学的根拠に基づく正確な情報を遅滞なく発信するよう求めたい。

 中国は24日から30日まで春節(旧正月)の大型連休に入る。国内外への大規模な人の移動が見込まれ、日本にも大勢の旅行者が訪れる。空港や港湾での水際対策強化が重要なのは確かだが、感染者の入国を完全に食い止めるのは難しいだろう。

 新型ウイルスに感染してから発熱やせき、息切れなどの症状が現れるまでの潜伏期間は最長2週間ほどとみられ、発症前に入国する可能性は大きい。また、国内初の患者となった神奈川県居住の中国人男性のように、解熱剤の服用で検疫所のサーモグラフィーによる体温監視をすり抜けるケースもある。ウイルスの侵入を前提に、国内での感染拡大を阻止する対策を講じる必要がある。

 国民の責務も大きい。流行地に渡航して体調に異変を感じたら、検疫所や医療機関で正直に自己申告すること。日頃の手洗いやうがいの徹底。せきやくしゃみが出るときは、周囲にしぶきをまき散らさないようにマスクを着けること。全て感染症に対する基本動作だ。一人一人の心掛けが社会全体を守る。

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