失敗と停滞
2024年10月20日
元陸上選手の為末大さんは中学生まで短距離走で負け知らずだった。中学3年時の全日本中学校選手権では100、200メートルの2冠を達成する。しかし高校に入ると記録が伸びず、後輩からも追い抜かれた▼成長に限界を感じ短距離を続けるか迷う中「この先どう生きていくか」自分自身で選択することを強く意識したという。選手としての将来だけでなく「どこでどう暮らし、何の仕事をしているか」など具体的にイメージした末に、ハードル走への転向を決断した▼400メートルハードルでも頭角を現し、大学4年時の2000年、シドニー五輪に出場。しかし予選レースで転倒して敗退した。海外慣れが必要と痛感するや、単身で欧州各国の賞金レースを転戦。続く01年の世界陸上で、スプリント種目では日本人初の銅メダルを獲得した▼小林市で開かれた講演会で、高校生に向けて語った半生。高校での挫折、初の五輪での転倒があってこそ、世界大会でのメダル獲得という成果にたどり着けたと振り返り「失敗は時とともに意味を変えていく」と表現した。今抱えている苦悩は、結果的に前進したならば道のりの一部というわけだ▼為末さんは「今この瞬間に何をするかだけが自分でコントロールできること」との言葉も贈った。人間はもともと失敗と停滞を繰り返す生き物。克服できずとも何とか付き合いながら自ら決めた目標に近づけばいい。そう思ったら、少しだけ肩の荷が軽くなる。
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