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月は二つあった?

2024年3月2日
 テイアという。46億年ほど前にあったといわれる仮説上の惑星である。大きさは今の火星ぐらいだったらしい。これが地球に衝突した際、飛び散った地球の破片が再び集まってできたのが月と言われている。

 以前にも触れた、月誕生の有力な説「ジャイアント・インパクト説」だ。面白いのは、このとき短い間だが月が二つ存在した時期があったらしいということ。カリフォルニア大の惑星科学者らが提唱した説で、2011年に科学雑誌「ネイチャー」に掲載された。

 二つの月の大きさは同じではなく、その差は3倍ほどあったそうだ。また、同時に夜空に輝くというのではなく、一つの月が沈んだ後にもう一つの月が出てくるという具合だったとか。やがて小さい方の月が大きい方に吸収されるように衝突し、現在の月になったという。

 もし今でも月が二つのままだったら、古今の文学などで描かれる月もずいぶんと変わっていただろう。起源一つとっても私たちの興味をかき立てる月。その月に1月に着陸した探査機「SLIM(スリム)」との通信が、先月25日に再開したという。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が発表した。

 スリムは1月末までに予定した活動は終えており、今回の通信再開は実験的なものだという。それでも氷点下170度にもなる過酷な時間を経ての復旧は見事である。目標地点からわずか55メートルという「ピンポイント着陸」と併せ、快哉(かいさい)を叫びたい成果である。

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